皆様は朝というとどんなイメージをお持ちでしょうか?始まり、活力、生命、正義。昔の人はそんなイメージを持っていたようです。
では夜はどうでしょう?朝と反対の終わり、死、悪だけですか?昔の人はそれだけでなくプラスのイメージも持っていたことが実は神話から分かります。
あなたの朝と夜のイメージが変わる不思議な違いを読み解いていきます。
目次
神話から朝と夜のイメージの違いを読み解く5つの話
そもそもまず神話で朝や夜を象徴する神様というのはそんなにいません。では神話のどこから昔の人の朝と夜のイメージを読み解くのかというと、主に朝の象徴である太陽と、夜の象徴である月が鍵になります。
今回は5つの神話で見られる月と太陽の関係から、昔の人がイメージした朝と夜のイメージについて5つご紹介致します。
ギリシャ神話の朝と夜:ヘリオスとセレネ
ギリシャ神話で太陽と月の神というとアポロンとアルテミスの兄妹神がイメージされますが、実は元々その要素は無かったのです。彼らはこのヘリオスとセレネが同一視されたことにより、それぞれ朝と夜の神様であるともされたのです。
では元祖朝と夜の神様である彼らの特徴はどんなものかと言いますと、兄であるヘリオスは東の宮殿に住み、アポロンの目覚めに合わせて太陽を引っ張ってくる神様です。
その役は常に空にいるとされており、神が犯す罪さえも告発して回る正義の象徴でもあります。それに対して妹のセレネは銀の馬車で夜空を行き、柔らかな月光の矢を放つ生き物の誕生と繁殖を司る神様です。
一見するとどちらも良い神様で終わりそうなのですが、ヘリオスは雄雄しく正しく、と言った神話があるのに対してセレネはちょっと怖い一面を持っています。一番怖い話が、彼女が愛した男性を無理やり永遠の眠りにつかせ自分だけのものにして、50を超える子供を生んだ話。この事から、月も綺麗なものだけど油断すると死んでしまうというイメージを昔の人は持っていました。
つまり朝は人に安全と安心を、夜は美しさと恐怖を与えるというイメージがあったようです。
ローマ神話の朝と夜:アポロンとルナ
ローマ神話ではヘリオスはアポロンと同一視され、新しい太陽、つまり朝の神となります。それに対して月、夜の神様は、ローマ神話のルナとギリシャ神話のアルテミスが同一視され生まれたディアナという神様が司っています。
この兄妹神がローマの朝と夜のイメージを教えてくれます。アポロンに関してはギリシャ神話の内容と同じ事が語られていますが、若干自由人というか人間味が増しており、ディアナに関してはアルテミスと違った面も語られています。
例えば月の満ち欠けと同じで3つの顔を持ち、神の世界ではルーナ、地上ではディアナ、死者の世界ではプロセルピナであるとされています。コレは多くの神様が同一視された結果でもありますが、もう一つ「人間だけの時間ではないから良いことも悪いことも予想がつかないことが起こる」という意識がそこには見て取れます。
そんな事から古代ローマの人は、朝は自分達の時間で自由なイメージ、夜は人間以外の時間であり規則を守らなくてはいけないイメージを持っていたといえます。
エジプト神話の朝と夜:ラーとヘズル
ちょっとマニアックな神話なのですが、このエジプト神話では上記の2つの神話と違った朝と夜のイメージの特徴を見ることが出来ますのでご紹介します。
ラーという神様は、エジプトの最高神でもあった有名な神様であり太陽神です。古代エジプト人は太陽の昇り沈みをこのラー自体の変形と考え、日の出のときはフンコロガシ、日中はハヤブサの姿をして天を舞い、夜は雄羊の姿で夜の船に乗り死の世界を旅すると考えていました。この辺はある程度神話やエジプトに詳しい人なら知っているかもしれませんが、真にマニアックなのはヘズルという神様です。
ヒヒの顔を持つ知恵と月の神様で、ラーがいなくなった夜に明かりを与えてくれる神様であり、実のところ夜と全く関連していない神様なのです。そう、エジプト神話において月は夜の象徴ではなく、ただただ冷たく暗い死者の世界であるものとされていたのです。
そんな死者の世界でも活動出来るのは神様だけであり、人間は必ず寝ていなければ死んでしまうとされておりました。そんな事から古代エジプト人は、朝は生き物の時間、夜は神無き怖い死の時間と扱っていたことが分かります。
ケルト神話の朝と夜:ルーとヴァロール
エジプト神話の太陽神と似たような名前をしていますが、こちらはケルトの太陽神です。朝の象徴ルーとその祖父でもある夜の象徴ヴァロールの関係は、完全に敵対関係にあります。ちなみにヴァロールは夜を象徴しても月の象徴ではないのです。月を象徴する神様は何人かいるのですが、それらは全て太陽神としての側面を持ちます。
月は夜の一部ではないところまではエジプト神話と同じなのですが、夜を司る魔王のような存在はいるのです。その点からしてエジプト人よりもケルトの人々は、夜に恐怖を感じていたと言えます。もちろん環境の差でもあったのでしょうが、それ以上にケルト人にはエジプトには無い潜在的に夜になると怖いものがありました。それが言語の違う人種からの攻撃です。
この地方では古くから様々な人種民族があり、それぞれがお互いを敵としていた歴史こそが様々な「神族」が争う神話を作り上げていったとも言えます。そんな事からケルト神話からは、夜は強大な敵の時間だがいずれ我々が打倒するべきものという攻めのイメージが窺えます。
日本神話の朝と夜:天照大神と月読命
最後は日本神話から見られる朝と夜のイメージのお話です。日本神話が他の神話と大きく違うのは、太陽神が女性であるということです。コレ実は重要な事が隠されています。
それは男性が太陽神の神話を持つ地域では、朝の時間は男が主役。そして男の方が強く正しい、というようなイメージが社会に根強く残っていた痕跡であるということ。朝と夜のイメージに男女のイメージが加えられているのです。
その点日本やその基になったアジア圏内では、ちょっと異端の発想が見受けられます。天岩戸伝説に始まるように日本の太陽神は正しさや男らしさといった面を多くは持っていませんし、女性太陽神がいるアジアの神話でも同じことが言えます。
女神ですので当然女性的な面が見られる神話も多く、その弟や兄である夜をすべる神はどうかと言うと、なんと中性的な描写が多く、特に死を連想させる神話が無いのです。それはつまり、日本を初め一部のアジア地域では、朝も夜も男性も女性も大きな差の無いものとして扱われていたというイメージが見受けられます。
まとめ
神話から見た朝と夜のイメージいかがだったでしょうか?
最後にちょっとジェンダーの話を持ってきましたが、実はコレも朝と夜のイメージにつながっているのです。
何かと言うと、それは男性=活動する=朝というイメージがある西の文化圏と、それらを区別する必要性を感じなかった東の文化圏で、朝と夜に対する危険度の認識が違っていたという事。そうした様々な違いが、実は神話には隠されています。
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