七福神の中の一人、寿老人といったらどんな姿をイメージするでしょうか。
長い白髪頭に長い髭、そして頭も長い老人の姿で、巻物を付けた杖を持ち鹿を連れている姿で描かれることが多いです。鹿は玄鹿と呼ばれていて、長寿の象徴とされています。寿老人は長生きのご利益がある神様です。寿老人のありがたいご利益をいただきに行ってみませんか?
妙隆寺 (神奈川)
鎌倉の小町の住宅街にひっそりと佇むお寺は妙隆寺と呼ばれ、この辺りは鎌倉幕府の有力御家人、千葉常胤の子孫である胤貞の邸宅跡であることから「千葉屋敷」と呼ばれています。
妙隆寺は千葉胤貞が祖先追福のため、氏寺である中山法華経寺の日英上人を開山として、至徳2年に千葉氏屋敷地内であった当地に創建したとされています。当時二世の日親上人は激しい修行をしたと伝えられていて、水行などの修行を行った池も残されています。
その後、日親上人は京都へ上り「立正冶国論」の一書を足利六代将軍義教に献して政道を諌めようとしました。しかしそれに怒った義教は日親を投獄し陰惨な拷問でも屈しない日親の頭に灼熱の鍋をかぶせ、舌端を切らせ日親の言葉を奪ってしまったといいます。
そんな歴史から「なべかむり日親」と呼ばれるようになりました。世の為、人の為ならばいかなる苦難にも屈しない日親上人ゆかりのお寺なのです。ここには、欅の一本造りの寿老人の尊像が安置されています。人々の安全と健康を守り、長寿を司る神様として地元の人にも親しまれています。
もちろんお供の鹿も一緒で三千年の長寿を象徴しています。小さなお寺でありながら、鍋かむり日親上人の逸話や寿老人を見ることができるユニークなお寺として訪れる価値ありですよ。
宝生寺(淡路島)
緑が豊かで水も美しい淡路島、ここにも寿老人を祀ったお寺が存在します。そして寿老人にまつわる様々な言い伝えがあることでも知られています。
宝生寺と呼ばれるこのお寺は天平13年聖武天皇の勅命をうけて建設が始まりました。僧行基が淡路島に建立を祈願して自ら刻まれた地蔵菩薩を安置したのが始まりとも言われています。そのお地蔵様は「日限地蔵尊」と崇められ、霊験あらたかな尊像として、多くの人に親しまれています。
そんなお寺の境内にある長寿橋は寿老人にちなんで、渡れば10年長生きできると言われています。寿老人は長寿の神様で老子の化身とも言われています。長命、富財、与宝、諸病平癒の神として古くから、人々の安全と健康を守ってきました。実は寿老人と桃にも深いかかわりがあるんです。
桃は若さのシンボルとも言われていて、「西遊記」で孫悟空が桃の木から長寿の実を取り、元気を取り戻したシーンは有名ですね。寿老人のもつ桃は美しく年を取り、美しく老いていくことの大切さを示しています。更に長寿のシンボルと言われている鶴と亀と鹿も有名ですが、こちらにもちゃんと意味があります。
美しく年齢を重ねるには、鶴のごとく美しく、亀のように耐える勇気をもち、鹿のように注意深く、俊敏にということを示しているのです。思わず納得してしまいますよね。そんなありがたい寿老人に会いに行ってみましょう。
鷲神社(東京)
東京の下町にある鷲神社といえば「おとりさま」で有名です。酉の市の日にはたくさんの人が訪れて盛り上がることでも知られています。この神社に祀られている御祭神は天日鷲命(あめのひわしのみこと)です。開運、開拓の福神様として、古くから人々に親しまれていますね。もう一柱は日本武尊(やまとたけるのみこと)です。
面白い言い伝えがあります。日本武尊が東征の帰途、この社の松に熊手をかけて勝ち戦のお礼参りをされた日がちょうど11月の酉の日だったそうです。そのことから、お祭りを開催するようになり、それが今の「酉の市」の起源とも言われています。江戸下町の文化として歴史絵にも多く描かれていて、江戸っ子らしい粋な様子は多くの人に愛されています。そんな伝説が残る神社に寿老人が奉られています。
お馴染みの白い髭をたくわえ、手に杖を持ち、長命の鹿をはべらせています。開運、延寿、福徳の神様として尊ばれているのは言うまでもありません。特に鷲神社の寿老人は学業成就のご利益もあると言われているので、受験生の参拝も多いそうです。境内は静かな空気に包まれています。そんな神社にひっそりと佇む寿老人に手を合わせるのも下町の風景のひとつです。
法善寺(東京)
東京にはもうひとつ、寿老人にゆかりのあるスポットがあります。法善寺は日蓮宗のお寺で、正式名を「春時山光晴法善寺」といいます。ここは寿老人ともう一柱の神様が一緒に祀られている不思議なお寺なのです。寿老人は山の手七福神のひとつとして、たくさんの人が訪れます。
本堂には極彩色の「七面明神像」が安置されています。こちらは保存状態が良好なことから新宿区の指定有形文化財に登録されています。七面明神とは、山梨県身延山の北にそびえる七面山に住む女神様のことです。法善寺の「七面明神像」は、唐風の衣裳に宝冠をかぶり、左手に火炎如意宝珠、右手に鍵を持ちます。
鍵は正法を開いて人々を救うことを意味していて、宝珠は仏に献上して成仏を約束された品といわれています。中正院日護上人の作ったものと伝えられていて、万治年間に駿河国から移され江戸で最初に祀られた七面明神とされています。寿老人がちょっとあせて見えてしまいますが、寿老人と七面明神が一緒に祀られているのもここだけです。
寿老人のご利益だけでなく、七面明神の美しい姿も見ることができれば運気もアップしそうですね。東京の真ん中にあるアクセスしやすいお寺なので、足を運んでみましょう。
尾長天満宮(広島)
天満宮といえば学問の神様が祀られる神社として、全国各地に存在しますね。広島にある尾長天満宮も御祭神を菅原道真公とした、学問成就の神様がいる神社として知られています。道真公は平安時代に無実の罪で九州大宰府に左遷される途中、この地に船を寄せて山に登って石に腰をかけて休息されたと伝えられています。
その場所には別の祠が建てられて「大宰原天満宮」と呼ばれていました。まさに同じ神社の境内に2つの天満宮があることになります。その後、江戸時代に本殿、拝殿、随神門、石鳥居などが建立され、ここに遷座して尾長天神宮と称することとなりました。
そんな学業に強力なご利益がありそうな神社の境内に寿老人が佇んでいます。ここの寿老人は思いやりのある心、正しい心で善行を積めば富貴と長寿が得られると言われています。また、南極星の精・寿星が寿老人として現れたので、求めるものには富と健康な長寿を与えてくれる神様です。富と健康な長寿とは、まさに人間が生きていく中で必要不可欠なものになりますよね。
要するに人が生きていく上で必要なものを与えてくれるということです。この神社の凄いところは学業のご利益ももらえることです。学業も富も健康もいただけるなんて、贅沢なスポットですね。貴重な寿老人をぜひ、見に行きたいものです。
まとめ
寿老人ゆかりのおすすめスポットはいかがでしたか。
七福神の中でも決して華やかではありませんが、人間にとって必要不可欠な部分にご利益を与えてくれる神様です。
愛嬌のある長い頭や白い髭を見ながら和やかな気持ちになるだけでも、寿命が延びそうですね。杖についている巻物の中身も気になるところです。
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