西洋の魔法がらみの物語にたびたび登場する「魔法使いマーリン」。白いひげにとんがり帽子をかぶった、そんな彼の姿を思い浮かべる人もいることでしょう。
色々な物語で、魔法使いの大御所、あるいは元祖的な存在として描かれている「魔法使いマーリン」は、実在した人物のようにも描かれています。
ではいったい「魔法使いマーリン」の本来の姿や、彼にまつわる魔法のお話には、どのようなものがあるのでしょうか?
「魔法使いマーリン」とは?
「魔法使いマーリン」は、シェイクスピアの「テンペスト」「指輪物語」「ハリー・ポッター」を始めとする、多くの物語に登場しています。
「魔法使いマーリン」は、もともとはイギリスの「ブリタニア列王史」という、ジェフリー・オヴ・モンマスによって描かれた文献に描かれています。
それによるとブリテン(イギリスのスコットランド、ウェールズ、イングランドの総称)の『ヴォーティガン王』は、築いても築いても崩れ落ちる塔に困り果てていました。
するとある魔術師が、「父親のいない男の子を探して、その子の血を塔の礎石にふりかけるとよい」という予言を『ヴォーティガン王』に告げたのでした。
するとウェールズ王の娘が、未婚のまま精霊の男との間に、超自然の力を持つ子を産んだということを耳にします。
まさにその子が父親のいない男の子であったので、その少年の血を塔にふりかけようと連れてくるのですが、その少年こそが後の「魔法使いマーリン」なのです。
しかし少年マーリンは、『ヴォーティガン王』に対して、「男の子の血を塔の碇石にふりかけよ」と予言した魔術師は、ウソをついていると告げたのです。
そしてその塔が崩れる本当の理由は、「地下に水たまりがあり、もともと地盤が弱い上に、その底には2匹の竜が住んでいるからだ」と教えたのでした。
しかも「その2匹は争いあっているため、地盤がしっかりとしないのだ」とも告げました。
そこでその地を掘り返してみると、マーリン少年の言う通り、水溜まりの中から白と赤い竜が現れたのでした。
この事実を目にした『ヴォーティガン王』は、マーリン少年の命を救うことにしたのでした。
その後、彼はその国の行く末や、アーサー王の出現など、次々と予言をし、それがことごとく的中していったのです。
「魔法使いマーリン」とアーサー王
「魔法使いマーリン」が登場する数ある物語の中で、もっとも有名なのが「アーサー王物語」です。
歴史上で「アーサー王」は、6世紀頃にブリトン人(ケトル人に属すブリテン島の先住民)を率いて、サクソン人の攻撃を防いだ人物とされています。
しかし「アーサー王物語」は、その内容のほとんどが、民間伝承をもとにした創作であるとされています。
その「アーサー王物語」に登場している「魔法使いマーリン」は、アーサー王の助言者として、また宮廷魔術師として活躍しているのです。
「魔法使いマーリン」は、実はアーサー王が子供のころに引き取り、養父として育てます。
ある日、ブリテンの王様が亡くなり、後継者争いが起こります。
そこで「魔法使いマーリン」は、大きな岩に魔力のある聖なる剣『エクスカリバー』が刺さっており、それを抜くことができた者が神から示された本物の王であり、王位を告げると宣言したのでした。
そこで何人もの屈強な騎士たちが試みたものの、岩に刺さった剣のエクスカリバーを誰も引き抜くことができなかったのです。
ところが15才のアーサー王子がその剣を引き抜くことができ、この行為ができた彼こそが王である証であると「魔法使いマーリン」は宣言したのです。
そして若くして「アーサー王」となった彼を、「魔法使いマーリン」は彼の力となり、数々の予言で助けていったのです。
「魔法使いマーリン」の本当の姿は?
映画や物語の中では、いつも白い髭にでっぷりとした姿、そして三角錐の帽子をかぶった典型的な魔法使いの姿として「魔法使いマーリン」は描かれています。
しかし彼の父は精霊とは言え、一部は人、一部は天使であるインキュバス(夢魔)と呼ばれる種族であったとされています。
実はこの「魔法使いマーリン」のモデルとなった人物が、存在したと言われています。
ひとりは、カンブリアで起きた戦いで正気を失った予言者。彼はもともとウェールズ地方の宮殿に住んでいた詩人であったという説と、武将か高僧であったとも言われています。
もうひとりは、上記の王様と塔の話に登場した少年なのですが、この少年の存在と正気を失った予言者をミックスさせて出来上がったのが、「魔法使いマーリン」だったのです。
そしてその少年マーリンは、国の行く末やアーサー王の出現など、あらゆることを預言しただけでなく、あの有名な史跡であるストーンヘッジを築いたという伝承もあります。
「魔法使いマーリン」と映画の世界
「魔法使いマーリン」が登場する有名な映画のひとつが、ディズニー映画の『王様の剣』です。
これは「アーサー王」の子供時代を描いた映画で、前述の「岩に刺さった剣を引き抜いた」アーサーについて描かれています。
ここではアーサー王の子供時代を「ワート」という名前で呼び、孤児であるという設定になっています。
そのワートに「魔術師マーリン」が、ワートを偉大な王にさせるために、いろいろな魔法の訓練を受けさせるという話です。
またワーナーブラザーズの映画「ハリー・ポッター」にも、「魔法使いマーリン」は登場しています。
この映画では、ややわがままなアーサー王子と「魔法使いマーリン」が、恐ろしい魔物たちを相手に戦い、活躍しながら共に学んでいくというストーリーです。
「魔法使いマーリン」の最期とは?
最高の魔法使いであるマーリンですが、彼にも実は欠点がありました。
なんと「魔法使いマーリン」は、色々な女性に言い寄り、ある意味女性なしでは生きていけないという人物だったようです。
そんな彼は、弟子のひとりであるヴィヴィアンという湖の妖精に恋をしてしまったのです。
ヴィヴィアンも「魔法使いマーリン」の魔術をすべて習得しようと、しばらくは知らぬふりで交際を続けていました。
しかしマーリンが何度も彼女に魅了する魔法を使おうとしたり、強引な態度に出たため、うんざりしてしまいました。
するとヴィヴィアンは、一緒に旅に出た時に見つけた大きな石の下に、なんと魔法を使ってマーリンを閉じ込めてしまったのです。
自らが教えた魔法により、皮肉にも自分の弟子によってその石の下に生き埋めにされてしまい、その後誰も二度と「魔法使いマーリン」の姿を見たものはなかったのでした。
なぜ偉大なはずの魔法使いが、このような最期を迎えてしまったのでしょうか?
それはどうやら湖の妖精であるヴィヴィアンがキリスト教の聖者であり、古代ケルトの宗教であったドルイドの特色を受け継いだ「魔術師マーリン」が敗北することで、キリスト教の勝利を表すためであったのではないかとされています。
まとめ
昔から西洋の多くの物語に登場した不思議な存在である「魔法使いマーリン」。彼は実在の人物ではないものの、実在したふたりの人物をモデルにして描かれた架空の魔法使いなのです。
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