最近の研究では別の見方がされています。フランス革命のために生贄として悪人にされた人物…。それこそがマリーアントワネットだったという見方です。
そこで今回は、これまでの定説とは異なるマリーアントワネット像が垣間見える、彼女の名言5つをご紹介していきます。
目次
パンにまつわるあまりにも有名な名言
「パンがなければブリオッシュを食べたら良い。」
“If the people have no bread, let them eat cake(brioche). ”
この言葉は、マリーアントワネットが最初に言った言葉ではありません。しかし世間一般的には、彼女の言葉として知られています。ここには、マリーアントワネットのイメージを操作しようとする意図的なものが感じられます。
さてこの名言は、「ブリオッシュ」の部分が、多くは「お菓子」や「ケーキ」などと訳されています。マリーアントワネットが贅沢な暮らしに明け暮れ、庶民の実状に無頓着だったことを伝える言葉とされてきました。
ちなみにブリオッシュはこちら
たしかに現在のブリオッシュは、パンよりもバターや卵、砂糖を多く使うため、お菓子に近いとされています。しかし、なんと当時のブリオッシュはパンよりも安い“パン”だったのです。事実、パンに使うより安い小麦が使われていました。
そのため、当時のフランス法には、
「パンが高騰した場合は、ブリオッシュと同等の価格まで値下げするように」
という記述まであったのです。まさに安価な食べ物の代表格。同じ金額を出せば、パンの倍の量が買えたとも言われています。
「高い食べ物が買えないなら、安い食べ物を買えばよい」
彼女は、実に当たり前のことを述べていたのです。
マリーアントワネットは、庶民への寄付金を作るために、自分の子どもにおもちゃを我慢させたりもしていました。そんな彼女が、国民の生活事情を知らないわけはありません。
この名言は、マリーアントワネットが民の暮らしに無頓着だったわけではなく、むしろ常識的に民のことを思う感性を持っていたことを教えてくれます。
傲慢とはほど遠い姿を伝える名言
「ごめんなさい、わざとではありません」
“Please forgive me, Monsieur. It is not on purpose.”
この名言は、マリーアントワネットの最期の言葉として知られています。自分の死刑を執行する相手の足を踏んだときに、思わず口にした言葉です。
ごく普通に生活していれば、だれでも一度ぐらいは口にしたことがある謝罪の言葉。しかし、マリーアントワネットの場合、「わざとではないが眼中にもなかったと言いたかったのだろう」と非難されることも。さらにはこの言葉のあとに、「でも、靴が汚れなくて良かったわ」と続けたとも言われ、悪者扱いされてしまっています。
しかし、自分が死刑にされる寸前、思わず口にした言葉にそこまで気を利かせることができるものでしょうか?
当時、マリーアントワネットはフランスの国民から相当に嫌われていました。処刑台への連行のされ方も酷いものでした。肥桶の荷車で長距離を運ばれ、髪は刈り取られ、両手は後ろ手に縛られる…といった、実際の統治者であったルイ16世よりも無残なありさまだったのです。
そんな状態で、かつこれから殺されるというときに、そこまでの頭は働かないのではないでしょうか。ありきたりの謝罪の言葉さえも出てこないのが普通でしょう。
マリーアントワネットは、ただ単純に、悪いことをしたから謝っただけなのではないでしょうか。そう考えると、この名言は、彼女に植え付けられた傲慢なイメージとはかけ離れた響きを発してきます。
贅沢三昧とはほど遠いことを教える名言
「何もいりません。すべて終わりました。」
“You do not need anything. All it was the end.”
これは、マリーアントワネットが処刑される前の最期の朝食について希望を聞かれたときの言葉。贅沢に拘った姿とは、ほど遠い印象を抱かせる名言です。
彼女がギャンブルにハマっていたり、高価なドレスやアクセサリーを持っていたりしたのは事実です。それにしても、贅沢三昧でフランスの財政を傾けてきた人物が、最期の望みを叶えられる場面で残した言葉としては、極めて不自然です。
実際、王室や特権貴族の出費は、フランス国家予算の6%程度に過ぎませんでした。なんの権限も持たない彼女が使えた額は、どんなに多くてもその中のさらに数%程度。
つまり「国家を傾けるほどの浪費家だった」という説には、かなりの誇張があったと考えられます。実際、当時の貴族として、相対的に見て目立った浪費家ではなかったことがわかっています。
最期の瞬間の言葉には、その人の人間性が出ます。この名言からは、マリーアントワネットが実は贅沢に拘った人物ではなかったことがわかります。