京都の定番観光スポットになっている龍安寺といえば、美しい石庭が有名です。
しかし「ただ石庭が見たい」という思いだけで訪れても、石庭の魅力は分かりません。龍安寺の石庭には魅了される理由や謎があり、見る人によって解釈が変わってくるという非常に興味深い石庭なのです。
そんな龍安寺の石庭を楽しむことができる魅力をご紹介します。
目次
なぜ龍安寺の石庭が多くの人を魅了するのか
龍安寺の石庭といえば、石庭の見える縁側に腰を掛けて眺めるというイメージです。静かな空間で石庭と向き合うことで、心の声に耳を傾けたり、癒しを感じるという人も多いのではないでしょうか。
実際に龍安寺の石庭を訪れると、たくさんの人が興味深く石庭を見ています。一体、何がこんなにも人を惹きつけるのでしょうか。
龍安寺の石庭は国の史跡及び名勝に指定されている素晴らしいものです。実際の石庭は白い砂と石が無造作に置かれたシンプルな庭になっています。
単純に龍安寺にあるから見に来るという理由だけでなく、この石庭には人を魅了する何かがあります。ひとつに謎が多いことです。
龍安寺の石庭はこんなに有名でありながら、誰が作ったのか、どんな目的で造られたのかが明確になっていません。
もうひとつ、謎と言えば、この石庭には全部で15個の石があるのですがどこからどう見ても14個しか見えないのです。

この2つの大きな謎が訪れる人を惹きつけています。そんなことから、龍安寺の石庭は見る人によって様々な解釈ができる庭です。
見ている人がそれぞれの世界観で、まるで何通りもの物語を紡ぐように、この石庭から様々な発想をしていきます。また、石庭が伝えようとしている内容も、受け取り方は人それぞれです。
こういった謎が多く、何通りもの見方ができる龍安寺の石庭だからこそ、多くの人を魅了しているのですね。
なぜ龍安寺に石庭が作られたのか
龍安寺は京都の中でも歴史があり、規模が大きく、外国人にも人気のお寺です。龍安寺だけでも見どころが多いのですが、石庭は何故、龍安寺に作られたのでしょうか。

この謎は、残念ながらはっきりと断定することができません。なぜなら、龍安寺の石庭には謎が多いからです。
石庭が造られた日、石庭を作った人、そして石庭を作った目的が未だ謎のままなのです。ですから、石庭の特徴からその理由を「想像」することしかできません。
龍安寺の石庭には全部で15個の石が5つのグループに分かれています。しかしどの角度から石庭を見ても、15個のうち1個は、他の石に隠れて見えないという配置になっています。
このように必ず一つが欠けるという造りにした意図としては、諸説ありますが、15という数字は東洋の世界では「完璧」や「完全」を表しているといわれています。
しかし必ず一つ欠けるということは、「不完全」ということを表しているのではないでしょうか。この不完全な部分を見つめることは、自分自身を見つめることに繋がるのです。
人間は誰しも「完全」ではありません。その不完全な自分から目を背けずに、受け入れて感謝するという教えを伝えるために石庭が造られたのではないでしょうか。
龍安寺・石庭の謎

龍安寺の石庭には数々の謎があります。そしてその謎こそが、多くの人を惹きつけて止まない魅力となっています。
龍安寺の石庭は15個の形や大きさの異なる石が置かれているだけのシンプルな庭です。この石庭は室町時代頃に造られたと言われていますが、実際のことは分かっていません。
龍安寺の石庭の一つ目の謎は、作者・作成日・目的がはっきりしていないことです。今日までに様々な視点から研究が進められてはいますが、想像の域を越えません。
龍安寺の建立者である細川勝元、寺院を創始した僧侶の義天玄承、茶人の金森宗和など様々な人物が噂されていますが、明確な事実は分かっていません。
興味深いのは庭に向かって左から2番目の石の裏に刻まれた「小太郎・○二郎」という名前です。「小太郎」は読めるのですが「○二郎」は「○」の部分を読むことができません。
さらにこの名前の2名が庭の作者なのかも不明です。
龍安寺の石庭の二つ目の謎は、石庭の石が何を表現しているのか分からないことです。庭と言えば草木が植えられていたり、花が咲くなど、もう少し分かりやすく表現されるのが一般的です。
しかし龍安寺の石庭には石が15個あるだけです。しかも15個あるうちの1個は隠れてしまい、15個すべてを見ることはできません。
この石が何を表現しようとしているのかについても、様々な説が飛び交っています。何通りもの解釈があるのは面白味ともいえますが、その分、謎が深まるのは言うまでもありません。
龍安寺・石庭の見どころ

せっかく龍安寺に石庭を見に来たのであれば、その見どころを知っておくと更に楽しむことができます。
何も知らずに行くのでは「シンプルな石が並んだ庭」で終わってしまいます。

まず、石庭を楽しむには、1ヶ所からずっと見るのではなく、少しずつ見る角度を変えて見るのがおすすめです。
謎にもあったように、15個ある石のうち、どこから見ても本当に14個しか見えないのか試してみましょう。

シンプルな石庭が徐々に違った風景に見えてくるはずです。また外側にある桜や紅葉との組み合わせも素晴らしいです。

桜や紅葉の季節は観光客がいつもの倍くらい訪れます。ゆっくりと眺めたい場合は、平日の午前中がおすすめです。
龍安寺の石庭の解釈で有名なのが「虎の子渡しの庭」です。これは中国の故事に由来するお話なのですが、虎の子が3匹生まれたら1匹は獰猛な子が生まれてくると言われています。
母虎は川を渡るのに、子供を1匹ずつくわえて渡るしか術がありません。母虎がいないとその獰猛な虎は他の子供を食べてしまいます。
子供を食べられないように川を渡るにはどうしたらよいのか、というとんちです。この石庭にはその虎が川を渡る姿を描いていると言われていますが、見て取ることはできるでしょうか。

龍安寺の石庭は縁側に座って見ている人が多いですが、実際は立って眺めるように設計されています。ここを知らない人は意外に多いのです。
ですから余裕があれば立って眺めてみましょう。立って眺めていると、実は14個しか見えないという石が15個すべて見えるというポイントがあります。
それでも独立して見えることはなく、他の石にちょっと被ってしまうのですが、15個見えるそうです。不完全が完全になるたった一点を探すというのも、龍安寺の石庭を楽しむ秘訣です。