「妖怪」と聞けば、多くの人は不気味な感じや、怖い霊であったりと、どちらかというとネガティブなイメージしかないかもしれませんね。
しかし妖怪の中には、イタズラはするけれど、正しい接し方をすれば幸せを呼んでくれたり、開運へと導いてくれるものもいるのです。
日本でよく知られている妖怪には、『座敷童』『アマビエ』などがありますが、それ以外にもどのような妖怪が幸せを呼ぶのでしょうか?
『獏(バク)』
『獏(バク)』は、中国が起源の妖獣であり、想像上の生き物です。
『獏』は、サイに似た姿をしていながら、鼻は象のようでもあり、しかし象よりもその鼻は短くて、不思議な形をしています。
なんでも『獏』は、タイ語で「まぜ物」という意味があるそうで、見た目もいろいろな動物を混ぜ合わせたようになっています。
これは神様が、最後に創られた動物ということで、残っていた材料をつぎはぎしてこしらえたために、こうなったという説があります。
中国では吉夢を運び、邪気を払う妖怪とされており、疫病が流行ったりすると、『獏』にお出ましいただいて、病魔を食べて退治してもらうのだそうです。
日本では、室町時代の頃から悪い夢を見ないように、『獏』という文字を書いた紙を枕の下にしのばせて、寝るようになったのです。
悪夢を食べる『獏』は、江戸時代になると宝船と七福神が描かれた絵の舟の帆に『獏』という文字を書き、それをお正月に枕の下に敷いて寝ることで、吉夢を見ることができるとされていました。
地方によると「今夜、悪い夢を見たらそれは獏に食ってもらいます」と3回唱えて寝ると、「幸せを呼ぶ」というところもあります。
実在の動物の「バク」は、この妖獣の『獏』とは別のものです。
『迷い家(まよいが)』の不思議
主に東北地方に伝わる、「幸せを呼ぶ」という不思議な家のお話です。
東北地方の山奥で、道に迷うと突然現れるという無人の家、『迷い家』。
そこはなんと庭には花が美しく咲き、ときには馬や牛も家畜小屋にいたり、決して荒廃した場所ではないのです。
家の中に入ると、誰もいないのに火鉢の上に鉄瓶が置かれ湯気があがっていたり、まるで誰かがついさっきまで、そこにいたような雰囲気なのです。
この『迷い家』にでくわしたなら、そこの家にあるものをひとつだけ、持ち帰ることで裕福になれるという言い伝えがあるのです。
また、『迷い家』に関しては、こんな話も残されています。
ある日、無欲の女性が『迷い家』にでくわしたものの、何も取らずに帰宅しました。
そして後日、川で洗い物をしていると、朱塗りのきれいなお椀が流れてきたのです。
それがあまりにも美しかったので、そのお椀を持ち帰り、米を計るのに使うことにしたのです。
ところがいくらすくっても、米櫃の中にある米は減ることがなく、女性は金持ちになることができたのです。
この話を聞いた欲深い人々が、この『迷い家』を探そうと必死になったのですが、どこにもそんな家は見当たりません。
要するにこの『迷い家』は、欲を持っている人には見つけることができないということです。
また『迷い家』は人生で一度しか遭遇することができないもので、神様から人生で一度だけ与えられる、幸運なのでしょう。
『ひょうたん小僧』
『ひょうたん小僧』とは、江戸時代の浮世絵師である鳥山石燕(とりやませきえん)著の「百器徒然袋」に描かれている妖怪のひとつです。
頭がひょうたんでありながらも、人間のような姿をし、まわりには葉がたくさんついている妖怪で、ひょうたんの付喪神(つくもがみ:古い道具などに宿る神や霊)であるとされています。
ここでのひょうたんは、植物として成っているひょうたんではなく、酒や水などを入れる中が空洞の入れ物になっているもので、その中にはよいものも、悪いものもたまりやすいとされているのです。
なんでも茂みの中から突然現れて驚かせるらしいのですが、『ひょうたん小僧』は悪霊や病を吸い込んで、人々を助けてくれる妖怪なのです。
疫病退散のご利益があり、人々に平穏な暮らしを届け、まさに「幸せを呼ぶ妖怪」なのです。
金の精霊『金霊(かねだま)』
こちらも『ひょうたん小僧』と同じく、鳥山石燕著の「今昔図画続百鬼」に描かれている妖怪のひとつです。
妖怪とはいえ、どちらかというと精霊、あるいは「気」と捉えられるようです。
なんでも地中に埋められている金銀が、夜になると「気」となって立ち上り、無欲な人や善良な人のもとに勝手に飛び込んでやって来るというものです。
そして日頃の行いのよい善良な人々や無欲な人々には、その「金霊」を見分けることができるのです。
いつも真面目に暮らしていれば、神より福が授けられるというわけです。
その姿は色々伝えられており、空を飛ぶ小判であったり、蔵いっぱいの金銀小判として現れたりするようです。
この「金霊」は、欲の深い人のもとには近寄らない、あるいは立ち去るとされています。
親切な妖怪『山男』
「山男」と聞くと、大きな男性を想像してしまうかもしれませんね。
「山男」は、山深く住んでいる妖怪で、大男であることもあれば、ひとつ目や一本足の妖怪であったり、あるいは子供であることもあります。
日本各地に「山男」の伝説は残されているようですが、その正体は山の精であったり、山の気が人間の姿となって現れているのだとか。
中でも今の静岡県の秋葉(浜松市)の山奥では、「山男」がよく目撃されていたようです。
「山男」は竹の葉を食すので、糞の中に竹の葉がまざったものが、山中によく落ちていたということです。
この「山男」は、見かけは恐ろしいものの、山で重い荷物を運んでいると手伝ってくれるのです。
とてもフレンドリーなのですが、賃金は受け取らず、言葉も通じないのです。
お酒が好きなようで、お酒を与えると喜んで飲むのですが、すぐに山に帰ってしまうのだそうです。
そのあとを追いかけて住まいを突き止めようとしても、風のように飛び去るので、決してどこに住んでいるのかは誰も知ることがなかったのです。
伝説の中には、人に害を与えるような「山男」がいたとされていますが、おおむね、人を助けて大変な肉体労働に喜んで力を貸してくれる、そんなやさしい妖怪なのです。
まとめ
妖怪に出会うと、怖いと思うのが普通ですが、中には出会うことで幸せを呼ぶステキな妖怪たちも存在しているのです。純粋な気持ちで過ごしていると、幸せを呼ぶであろう妖怪が、きっとあちらからやって来てくれるのではないでしょうか?
▶︎天狗にまつわるスピリチュアルな意味とは?神秘的なご利益と聖地はこちら
▶︎超科学文明【カタカムナ】の不思議を紐解くウタヒや効果について解説はこちら