
四国お遍路33番札所の雪蹊寺(せっけいじ)は、四国霊場の中では2つしかない、臨済宗妙心寺派の寺の1つです。白砂の美しい月の名所として知られる土佐湾の桂浜。幕末の志士、坂本龍馬の銅像が立っていることでも有名です。
雪蹊寺はそこから西へ約4キロほどにあり、弘仁6年、弘法大師によって真言宗「高福寺」として開創されました。
土佐の大名、長曾我部家の墓もあるこちらの雪蹊寺。歌詠みの妖怪伝説や御朱印、見どころなどをご紹介していきます。
月峰和尚にまつわる妖怪伝説

同寺はかつて弘法大師により「高福寺」と称されていました。一度廃寺となり、それを「慶運寺」と改めて再興したのが、かの有名な土佐領主、長宗我部元親公でした。彼の死後、後継した四男である盛親が長宗我部家の菩提寺とし、元親の法号をもとに寺名を「雪蹊寺」と改名、今日までその形を残しています。なお寺内には、元親の長男である長宗我部信親の墓も現存します。
さて、臨済宗派であった元親公が初代住職として招き、中興の祖としたのが、月峰和尚です。彼にまつわる、歌詠み妖怪の伝説があります。
時は和尚が住職として就任する以前のこと。ここでの妖怪というのは、和歌の上の句に悩んで亡くなった者が成仏できずに、荒れた雪蹊寺に住み着いた霊のこと。妖怪の正体を確かめるために和尚が座禅を組んでいたところ、どこからともなく「水も浮き世という所かな」という下の句が、泣き声とともに聞こえてきたといいます。これに和尚が「墨染めを洗えば波も衣きて水も浮き世という所かな」と詠んだところ、泣き声はそれ以降しなくなり、妖怪も出なくなったといいます。
この話を聞いた元親公が和尚の力に感嘆し、住職になるようお願いしたそうです。
雪蹊寺のご利益

雪蹊寺のご本尊は木造薬師如来像。薬壺を持ち病気を治す仏様として知られており、西方極楽浄土の阿弥陀如来に対して、東方浄瑠璃界、すなわち現世の教主とされています。

薬師如来像は東大寺・金剛力士像でも知られる運慶が、高知に滞在した際に制作されたもの。本堂には長男の湛慶が制作した毘沙門天像・吉祥天女像・善膩師童子像も安置されており、いずれも重要文化財に指定されています。
薬師如来は、如来となる前の菩薩の時代に「十二の大願」を立て、その大願を全て果たして如来になられました。十二の大願の中には「病気の災いを除き安楽を与える」というものもあり、この大願を果たしたことから、医薬を司る仏という意味で「医王」との別名があります。
雪蹊寺の御朱印の特徴

落ち着いた佇まいで、訪れた人々の心を和やかにしてくれる雪蹊寺。御朱印は境内の納経所でいただくことができます。まずご本尊にご挨拶するのをお忘れなく。
「薬師如来」と書かれた雪蹊寺の墨書きがメインになります。書いてくださる方にもよりますが、その筆跡を見るからに伝わってくる力強さには、病気に負けんとする意思が感じられます。
雪蹊寺の見どころ
山本玄峰の像

十八代住職、山本玄峰老師の像。玄峰老師は失明に近い眼病の身でありながら、裸足で四国霊場を巡り、7回目の遍路の時に雪蹊寺の前で倒れているところを、十七代住職山本太玄和尚に救われました。96歳まで生きたその生涯のパワーを、そこには感じることができます。
光が差していたり、山本玄峰の像に虹がかかっていたり、とても素敵な写真が撮れました。
太玄塔

十七代山本太玄和尚の供養塔。彼は明治維新に伴う廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で廃寺となった寺を復興させました。その文字は、失明状態にあった玄峰老師が手掛けたといわれています。
大師堂

本堂をお参りした後は、大師堂へ参拝です。スポットライトを浴びているように陽の光が差していますね。

あまりに輝かしくて、お大師様に歓迎されているかのようでした。
観音堂

馬頭観音が安置されています。天井に描かれているのは松洞庵・横井五仙の天女絵です。
長宗我部信親の墓
元親公の長男である信親公のお墓です。信親公は豊臣秀吉の九州征伐に従い、豊後で家臣700人と討ち死にするという壮絶な最期を迎えました。
通夜堂

本来は夜通しお勤めすることを「通夜」というのですが、四国では歩き遍路が無料で宿泊できる施設を通夜堂と云います。布団やベッド、炊事施設まで備わった施設もあります。石仏の裏にある茶色の小屋です。
山本玄峰が行き倒れになった時も通夜堂に宿泊していました。そこで太玄和尚から「心の目を開け」との諭しを受けたといわれています。しかし昨今では通夜堂を利用する人のマナーが悪くなり、今後の存続が問題視されています。
秦神社

雪蹊寺に隣接している秦神社は、雪蹊寺が明治時代に廃仏毀釈で、廃寺になった時、雪蹊寺に安置されていた元親公の像などを御神体として創建されました。
まとめ
雪蹊寺の御朱印や見どころはいかがでしたか。長宗我部元親ゆかりの雪蹊寺。国指定の運慶、湛慶の鎌倉時代の仏像の名作が拝観できる貴重なお寺です。
ご本尊である木造薬師如来像はもちろんのこと、戦国の時代を生き抜いた長曾我部家のパワーを、存分に感じていただければと思います。
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