徳島県板野郡板野町にある四国八十八ヶ所霊場4番札所「大日寺(だいにちじ)」は、三方を山に囲まれ、静かな境内は板野町史跡に指定されています。四国88ケ所霊場開創1200年を記念して、「大日寺平成の大改修」が平成26年より5ヶ年計画で行われています。それは次の1200年先を見据えての大事業なのです。そんな大日寺の御朱印や見どころをご紹介します。
大日寺の見どころ
山門(鐘楼門)
大日寺の山門は、2階建て、朱塗りの美しい建物です。1階部分は角柱で、2階部分は円柱の鐘楼という珍しい造りです。平成30年1月27日現在、「平成の大改修」の一環として、山門は解体修復工事中でした。平成30年の秋には二層式鐘楼門が再建される予定です。さらに朱の色が鮮やかな鐘楼門が蘇ることでしょう。
手水場(蛤水)
山門を入ると左手に手水場があります。かつては蛤の汁のように白く濁った水が湧き出ていました。その水は胃腸に良い水として知られていましたが、現在は、衛生面から上水を利用しており、宝珠をくわえた竜の口から流れ出ています。白濁はおそらく地質の関係だろうということですが、お寺の横の川では今でも白く濁った水が見られるそうです。
本堂
境内の正面奥にあり、ご本尊は大日如来(金剛界)で、左手の人差し指を立て、その人差し指を右手で握る智拳印(ちけんいん)を結んでいます。
寺伝によりますと、空海(弘法大師)が42歳の弘仁6年(816年)、この地で修行していたときに大日如来を感得し、一刀三礼(いっとうさんらい。仏像を刻むのに、一刀を入れるごとに三度礼拝すること)をして55センチほどの大日如来像を彫造しました。それを本尊として創建したそうです。
現在のご本尊は、室町時代の作で、前仏と同じ大きさの金色に輝く秘仏です。通常は住職でさえ就任した時と退任する時の二度しか見られないそうですが、「平成の大改修」で修復が終了し、平成29年3月から12月までの毎月28日に開帳されました。
大日如来は、真言宗では宇宙の中心、万物の根元で、人々に広く慈悲をもたらす最高の仏とされています。
西国33観音像
本堂と大師堂を結ぶ回廊に、西国33観音霊場の観音像が安置されています。江戸時代中期の寛政2年(1790年)に多くの信者から奉納された木造の観音像です。こちらも「平成の大改修」で修復作業が進められており、平成30年秋には終了する予定のようです。「南無大慈大悲観世音菩薩(なむだいじだいひかんぜおんぼさつ)」と唱えながら回廊を歩くと、きっと観音様が願いをかなえてくださるでしょう。

大師堂
回廊を伝って進むと、大師堂に出ます。「平成の大改修」で最初に開始されたのが弘法大師(空海)像と大師堂の屋根の修復でした。平成27年6月に終了し、大師像を拝顔することができます。
仏画家でもある真鍋俊照名誉住職が修復された「両面大師画像」を見ることができます。「両面大師」は弘法大師の御影(おみえ)を白地と紺地に描いたものです。左側にある白地は昼の大師、右側にある紺地は夜の大師を表しています。この二つが合体することで、正面の彫刻の大師坐像が生まれるとされています。
多羅葉樹(たらようじゅ)
参道に植えられている多羅葉樹は、葉が厚く、葉の裏に爪などで文字を刻むと、樹液が変色して黒く残るので、お経を書いたり、戦国時代には情報を伝える手段に使われたりして、「葉書」の語源になったという一説があります。また、寺社では葉を火であぶって吉凶を占ったりもしたそうです。写真左が葉の表、右が葉の裏です。爪で「仏」の文字を書いてみましたが、力の入れ方が弱かったのか黒くなりませんでした。(ちなみにこの葉は、別のお寺で多羅葉樹の下に落ちていたものです)
その他、本堂の左手に薬師堂、阿弥陀堂、本堂の右手に艶めかしい弁財天女像(徳島在住の方の作品)、大師堂の脇に真っ赤なビンズル尊者
境内の片隅に供養塔や地蔵尊像などがあります。
御朱印
中央に大日如来(金剛界)の種字「バン」と「大日如来」の墨書、五大(地・水・火・風・空)を表す五つの梵字「ア・バ・ラ・カ・キャ」の宝印。右上に「奉納」の墨書と四国第四番の朱印、左下に「大日寺」の墨書と黒巖遍照の朱印。中央の宝印が花びらのように美しい御朱印です。
歴代ご住職の底力!
先々代のご住職は、ハンセン病のお遍路さんを温かく接待されたそうです。また、真鍋俊照名誉住職(1998年〜2015年住職)は、仏教美術学者、四国大学教授でもあり、『歴史と文学の旅16弘法大師紀行』(平凡社)、『曼荼羅美の世界』(人文書院)など多数の著書がある方です。仏画家でもいらっしゃる真鍋俊照名誉住職は、曼荼羅を描かれることでも知られています。ご自身が3年かけて修復された「両面大師画像」2幅を大師堂で見ることができます。
そして、現ご住職は、次の1200年先を見据えて「平成の大改修」を行っていらっしゃいます。なんと次の修復工事の建材となる樹木として、500本規模のケヤキを中心とした植林を敷地内で進めていらっしゃるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
四国88ケ所霊場開創1200年記念事業としての「大日寺平成の大改修」は、次の1200年先を見据えた事業であるという遠大な計画に驚き、感銘しました。何十年先か何百年先かの修復工事のために樹木の植林を敷地内で行うという発想が素晴らしいと思います。
いくたびもの興隆と衰退を繰り返しながらも、今日まで継承されてきた大日寺を初めとして、四国霊場が未来永劫に存続するようにとの願いが強く感じられます。まさに宇宙の中心、万物の根元であるとされる大日如来をご本尊とするお寺にふさわしい考え方であり、実践であると思います。
すでに修復が終了した弘法大師像、弥勒菩薩坐像、ビンズル尊者像、ご本尊の大日如来坐像。そして、現在第2期工事として行われている西国33観音像の修復と鐘楼門の再建工事は、平成30年秋終了の予定です。蘇った大日寺をぜひ訪れてみてください。

1200年後を見据えての改修工事計画とは凄いですね。1200年後はどのような世の中でしょうか想像がつきません。
今1200年前に思いを寄せてみるよりも、もっと難しいです。弘法大師様はそれを読まれていたのでしょう、私には先の事を読めませんが、
今年秋の鐘楼門改修終わったら参拝してみたいです。今年は思うことが多いですが、良い年になるよう勤めていきたいと思います。
あなた様の記事を読ませて頂いて色々感動し、私が失念した事を、これからもこれからも教えてください。
ご訪問ありがとうございます。開創1200年記念の事業に、さらにこれから1200年先を見据えての改修事業という大日寺の遠大な計画は素晴らしいですね。我々の50年~100年の生涯で、日常の些末な悩みなど吹き飛んでしまいます。鈴木様がおっしゃるように弘法大師様はそういうことを読まれていたのかもしれませんね。私も限りある人生を、後世の人々のために何かできることを意識して取り組んでいきたいと思います。