
四国霊場58番札所「仙遊寺」があるのは、山号でもある作札山(されいざん)の山頂にほど近い高台です。高台からは四国一の高さを誇る今治国際ホテルや瀬戸内海の島々、「しまなみ海道」など、豊かな景色を見ることができます。
「仙遊寺」という名の由来となった伝説や、竜登川の伝説など、多くの言い伝えが残る四国霊場でもあります。仙遊寺のそれらの伝説や歴史、御朱印、見どころなどをご紹介していきます。
仙遊寺の歴史

仙遊寺の創建は7世紀のこと。天智天皇の勅命を受けて、伊予の国主であった越智守興(おちもりおき)公が、作札山頂上付近に堂宇を建立したのがはじまりです。
作札山のある高縄半島は、瀬戸内海の要所である来島海峡があり、対朝鮮半島の防衛線として機能していました。作札山もまた、防衛の拠点として使用されていたと考えられ、その証拠として、頂上に天智天皇ゆかりの五輪塔も残されています。
弘法大師は四国霊場の開創期、仙遊寺で修行されました。大師は病に苦しむ人々を救済しようと井戸を掘り、当時荒廃していた七堂伽藍を修復して再興に導きました。現在でも井戸は「お加持の井戸」として信仰されており、その跡は旧参道の脇にみることができます。
江戸時代には一時荒廃の道を辿ったものの、明治時代には再興。その立役者であった宥蓮上人は、明治4年、日本最後の即身成仏として入定されました。
仙遊寺の伝説
「仙遊寺」の名の由来・阿坊仙人の伝説
かつての仙遊寺には、阿坊と呼ばれる仙人が住んでいました。仙人は寺の諸設備を整えるとともに、約40年にわたり、同寺で修行を積んでいたといいます。
しかしながら養老2年(717)のある日、仙人は忽然と姿を消しました。そのありようはまるで雲と遊ぶようだったと伝えられており、この伝説から、寺は「仙遊寺」と名付けられたのです。
竜登川と観音様の伝説

その昔、ある竜女が海から竜登川をつたい山を登り、観音様を彫り上げたのだとか。一刀三礼(仏像を彫るときに、一刻みするたびに三度の礼拝をすること)を重ねながら、竜女は幾多の年月をかけて像を完成させ、海へと戻っていきました。
その出来事ののち、旧暦の7月9日には不思議と竜燈が連なり、山を登り、仙遊寺にある桜の枝にかかったといいます。現在では、この伝説を物語る石碑も建てられています。
ごろべえ坂の伝説
かつて仙遊寺には、遠く海まで聞こえる大きな太鼓がありました。ある日、漁師である「ごろべえ」が、太鼓の音のせいで魚が逃げると腹を立て、仙遊寺に来訪。包丁で太鼓の皮を引き裂いてしまいました。
その帰り道、ふもとの坂でごろべえは転んでしまい、当時の傷が原因で亡くなってしまいます。坂はのちに「ごろべえ坂」として語り継がれ、旅人たちはゆっくりと坂を歩むようになったといいます。
犬塚池の伝説
栄福寺と仙遊寺を行き来する利口な犬が一匹。栄福寺の鐘が鳴ればそちらへ、仙遊寺の鐘が鳴ればそちらへと、それはそれは賢い犬だったそうです。
ところがある日、2つの寺の鐘が同時に鳴ってしまいました。どちらに行くべきか悩んだ末、犬はお勤めができないと嘆き、池に身を投げてしまったといいます。
犬の死を悲しんだ村人たちは、池のほとりに塚を築き「犬塚池」と名付け、供養しました。
仙遊寺のご利益

仙遊寺のご本尊は千手観音菩薩。またの名を千手千眼観自在菩薩(せんじゅせんげんかんじざいぼさつ)といいます。
仏様たちの集合図で、各々の思想を表現した胎蔵界曼荼羅という番付表があります。蓮華部(観音様のカテゴリー)のなかで、千手観音は蓮華王菩薩と呼ばれる最高位。
そのご利益も広範にわたります。延命、病気治療、夫婦円満、恋愛成就など、すべての現世利益を救済してくれる観音様ですから、さぞご利益があることでしょう。
仙遊寺の御朱印

山頂近くに美しい景観をもつ仙遊寺。御朱印は境内の納経所でいただくことができます。まずご本尊に挨拶するのをお忘れなきよう。
こちらが仙遊寺の御朱印です。揮毫は千手観音の種字である「キリーク」に「千手大土」です。中央の宝印にも、種字である「キリーク」が描かれています。右上にある「五十八番」と書かれた剣も印象的ですね。
字体としては細めであるものの、どこか風流を感じさせるところがありますね。
仙遊寺の見どころ
仁王門

仙遊寺の境内は小さめです。車やバスでお越しになる場合は、寺院内にある駐車場をご利用ください。
子安観音像

駐車場には安産や幼児の成長を見守る「子安観音像」が安置されています。観音像右下にある丸い石は「子宝石」です。
本堂

本堂には、ご本尊である千手観音像が奉納されています。

本堂右手には藤棚。その近くには、写真のような御砂霊場と弘法大師の銅像もみられます。

大師堂

大師堂です。向かって右側には、仏足石があります。

まとめ

第58番札所である仙遊寺についてご紹介させていただきました。小さな境内とは裏腹に、その背景にはたくさんの伝説、怒涛の歴史がありました。仙遊寺の歴史や伝説を学んでから訪れると、より楽しむことができるのではないでしょうか。ぜひ、足を運んでみてくださいね。
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