
東西に走る国道11号線と、JR予讃線に挟まれて存在する四国63番札所、吉祥寺(きちじょうじ)。かつて寺院の大部分を占めていた21の伽藍は、近代化に伴う交通整備のため、狭められることとなりました。
四国霊場においては、本尊を毘沙門天とする唯一の札所であることでも有名な吉祥寺。その歴史や御朱印、見どころなど、ご紹介していきます。
吉祥寺の歴史

吉祥寺の縁起は、弘法大師が同地を訪れた弘仁年間(810-824)にさかのぼります。訪問の際、大師は1本の光を放つ檜を見つけ、その一帯に霊気を感じ取ります。大師はその檜を用いて毘沙門天を彫り上げ、さらに脇侍として吉祥寺天像、善膩師童子像(ぜんにしどうじぞう)を彫像しました。ちなみに善膩師童子は、毘沙門天と吉祥天の子どもとなります。
その後、民が貧しさから救済されるように祈願し、堂宇を建てたことが吉祥寺のはじまりであるといわれています。
開創した当時の寺は、現在から南東にある坂元山にあり、21坊もの塔頭を有していたと記録が残っています。しかしながら天正13年(1585)、豊臣秀吉による四国攻めの争いに巻き込まれ、全山が焼失することとなりました。
やがて江戸時代の万治2年(1659)に末寺であった檜木寺と合併し、現在の土地に再建。現代まで語り継がれる四国霊場となっています。
吉祥寺のご利益

吉祥寺は、四国霊場のなかで唯一、毘沙門天がご本尊です。
毘沙門天のルーツはインドの前期ヴェーダ時代の神、ヴァイシュラヴァナです。ヴァイシュラヴァナは北方を守護する神様であり、その発音をかたどったものが「毘沙門」というわけです。
インドでは四方を守る神様が存在し、北方のヴァイシュラヴァナ、東方のドリタラーシュトラ、西方のビルーバクシャ、南方のビルーダカが存在します。これらが順に毘沙門天、持国天、広目天、増長天として仏教の世界観にも導入され、四天王として君臨しています。
甲冑を身にまとい、右手に宝塔、左手に宝棒や三叉戟を持った武将のような出で立ちが特徴的です。金運アップ、無病息災など多様なご利益があると考えられており、室町時代には商いの神として恵比寿、大黒と並んで七福神の一尊として認められました。なお江戸時代以降は、勝負事の神様としても信仰を集めることとなります。
吉祥寺の御朱印
近代の道路整備により寺域は縮小したものの、いまだ強い存在感を放つ吉祥寺。御朱印は境内の納経所でいただくことができます。まずご本尊にご挨拶するのを忘れないようにしましょう。
写真が吉祥寺の御朱印です。揮毫は毘沙門天の種字である「ベイ」に「毘沙門天」です。火炎宝珠に彩られた中央部にも、種字である「ベイ」が描かれています。なめらかなようで、どこか強い生命力を感じさせる筆跡ですね。
吉祥寺の見どころ
山門

山門の前には小川が流れています。石橋を渡った先には、まるで狛犬のような「白象」がみなさんをお出迎えしてくれます。
福聚閣

境内、山門を入って右側には「福聚閣(ふくじゅかく)」と呼ばれる建物があります。ちなみに中は空っぽで何もありません。
他では類を見ないオブジェ

山門を入って左側に「巡りゆく思い」と表されたオブジェがあります。
本堂

本尊である毘沙門天が祀られています。毘沙門天にはさまざまなご利益があると伝えられていますが、吉祥寺では「七難即滅 七福即生」のご利益をもつ神様、そして「米持ち大権現」として信仰されています。
「七難即滅 七福即生」について、「七難」とは太陽の異変、星の異変、風害、水害、火災、早害、盗難。「七福」とは寿命、有福、清廉、威光、人望、愛敬、大量を指します。仁王教の一節であり「あまたの災難を滅ぼし多くの福をもたらす」という転禍為福の考えを反映したものです。
ちなみに、七福神への信仰も以上の「七福」が起源となっています。
大師堂

本堂左、参道の方に向かって建てられています。
水子地蔵と手水舎

山門を入り、本堂に向かう左手にあります。水子地蔵と手水舎は隣り同士に並んでいます。

3体ある水子地蔵のうち2体は、木々に覆われてお顔がよく見えませんでした。

手水舎でのお清めも忘れないようにしましょう。
成就石

手水舎右にある鐘楼堂の前方にあります。高さは1mほどの石で、直径30-40cmほどの穴があります。
金剛杖を持って本堂前から両目を閉じて、一心に願いごとをしながら、杖を穴にくぐらせることで、あらゆる願いを叶えてくれるそうです。
お迎大師像とくぐり吉祥天女

成就石の右側にあります。吉祥天は毘沙門天の妻であるといわれています。くぐり吉祥天女の高さは160cmほど。潜り抜けることで「美しさ」と「富」の両方を得られるのだそうです。願ったりかなったりの話ですから、ぜひ潜ってみてはいかがでしょうか。
まとめ

四国霊場のなかで唯一、毘沙門天を本尊とする吉祥寺。ご本尊のみならず、オブジェや成就石、くぐり吉祥天女など、他ではなかなか見ることができない、特徴的な境内もイチ押しのポイントです。ぜひとも足を運んでみてくださいね。
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