今回ご紹介する四国71番札所「弥谷寺(いやだにじ)」は、香川県三豊市三野町に境内をもつ四国霊場です。
弥谷寺の本堂を参拝するためには、なんと540もの石段を登らなければなりません。歩き遍路の方には「遍路ころばし」ともいえる、少々厳しい道のりとなるかもしれません。
しかし、本堂をはじめ見どころも多く、三豊平野を一望できる景色も好評です。
そんな、石段の先にある四国霊場、弥谷寺について、歴史や御朱印、見どころなどをご紹介します。
目次
弥谷寺の歴史
弥谷寺の創建は今から約1300年前。聖武天皇の勅願を受けて、高僧行基が堂宇を建立したのがはじまりです。行基は聖武天皇のおばにあたる光明皇后の両親の菩提を弔うため「大方広仏華厳経」を祀りあげました。
当時の寺院の名称は「蓮華山八国寺」。これは当時、寺院から中国・四国の八国を眺められたことに由来します。弘法大師は7歳から12歳の間、当寺にある「獅子之岩屋」で学問に励んだという記録が残っています。
青年となった大師は大同2(807)年に同地を再訪。その時に蔵王権現のお告げを受けたことから千手観音を安置し、唐から持ち帰った金銅四天王五鈷鈴を奉納、伽藍を再興したと伝えられています。
またこの頃、山名が「剣五山」、寺名も「弥谷寺」に改められます。前者は大師が求聞持法を修しているところ、五本の剣が落ちてきたことに由来します。後者は周囲に谷が多かったという、地理的な背景が大きいようです。
戦国時代の「天正の兵火」に伴い、弥谷寺も一時荒廃の道をたどりました。しかし、丸亀藩主京極氏の帰依のもと慶長5(1600)年に復興、現代に続く四国霊場として親しまれています。
弥谷寺のご利益
弥谷寺のご本尊は千手観音菩薩です。みなさんもよくご存知の仏様かと思います。その特徴的なビジュアルから、アニメや漫画のキャラクターとして描かれることもしばしば。
観音菩薩という名が付く仏様には、実に多くの種類があります。他にも、十一面観音菩薩や馬頭観音菩薩が有名ですね。
観音菩薩は、三十三の姿に変化して人々を救うとされています。これは文字通り、三十三通りの変化があるという意味ではありません。観音菩薩はすべての人を救済するため、人の数だけ変化します。つまり、その数は無限であるといえるでしょう。変化観音の考え方が浸透するにつれて、様々な形の観音様が彫像されるようになりました。千手観音もまた、そのうちのひとつというわけです。
- 災難の忌避
- 寿命延命
- 病気治癒
- 夫婦円満
- 恋愛成就
これらは生きている間に得られるご利益、いわば現世利益です。これらに加えて千手観音菩薩には、死後に得られる後世利益もあるといわれます。
弥谷寺の御朱印
540の石段や、弘法大師が幼少期を過ごした「獅子之岩屋」など、見どころあふれる弥谷寺。御朱印は境内にある納経所でいただくことができます。まずはご本尊に参拝するのを忘れないようにしましょう。
こちらが弥谷寺の御朱印です。揮毫は千手観音菩薩の種字である「キリーク」に、観音菩薩を祀るお堂を示す「大悲殿」の文字が書かれています。中央の宝印は蓮台上の火炎宝珠に、こちらも「キリーク」の文字が描かれています。
弥谷寺の見どころ
境内への行き方
弥谷寺の境内に行くには、以下の2つの方法があります。
- 仁王門を通り、百八煩悩階段を上がるコース
- お寺さん経営のマイクロバスに乗車し、本坊近くまで行くコース
冒頭から述べている540段の階段を登るのは①のコースとなります。
②を用いる場合は片道500円、往復750円の料金がかかりますが、行き帰りも大分楽になります。ご自身の状況、体調に合わせたコースを選んでくださいね。
俳句茶屋
仁王門前に店を構える、弥谷寺の名物です。こちらの店先にお遍路さんが一句をしたためていくことでも有名。店内にも、たくさんの俳句の短冊が飾られていました。
仁王門
俳句茶屋を進み、階段を登ると仁王門がみえます。ここから本堂までの石段が、計540段です。気を引き締めてかかりましょう!