四国74番札所甲山寺(こうやまじ)周辺は、四国八十八か所を開基した弘法大師の故郷であり、幼少期を過ごした場所です。73番札所の出釈迦寺(しゅっしゃかじ)とならび、弘法大師のルーツに深い関わりのある霊場であるといえるでしょう。
そんな甲山寺について、歴史や御朱印、見どころなどをご紹介していきます。
甲山寺の歴史
甲山寺周辺は弘法大師の生まれ故郷。幼少期の真魚(弘法大師の幼名)少年は、同地で泥の仏像や草木の小堂を作るなど、活発な子どもであったといわれています。
平安時代初期、仏道に入った弘法大師。75番札所・善通寺と72番札所・曼荼羅寺の間に寺院を建立しようと、霊場を探していました。その道中、甲山のふもとで一人の老人に出会います。
老人は大師に言いました。「私は昔からこの地に住み、人々を救い、仏の教えを広めてきた聖者である。この地に寺を建てれば、未来永劫、私が守護してやろう。」
この教えに感得した大師は早速石を割り、毘沙門天立像を刻み、老人が出てきた山の岩窟に安置しました。これが甲山寺のはじまりです。
その後、嵯峨天皇の勅命を受けた弘法大師は、香川県にある日本最大のため池「満濃池」の修築工事にあたることになります。大師は甲山の岩窟で工事の成功を祈願、薬師如来像を彫り上げ修法しました。すると、大師を慕って数万人の人々が集まり、工事は3か月で完成に至りました。
難工事の成功により金を与えられた大師は、その一部を寺院の建立にあて、薬師如来像を本尊として安置しました。寺院は、山の形が毘沙門天の鎧と兜の形に似ていたことから「甲山寺」と名付けられ、現代まで語り継がれています。
甲山寺のご利益
甲山寺のご本尊は薬師如来です。四国霊場でもお馴染みの仏像様ですね。西方極楽浄土の教主である阿弥陀如来に対して、東方浄瑠璃界(現世)の教主とされています。正式名を薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)といい、大医王仏(だいいおうぶつ)などの呼び名もあります。
薬師如来は、如来となる前の菩薩の時代に「十二の大願」を立てました。これは、自身が生きている間に人々の病気を治し、衣食住を満たそうという薬師如来の誓いを言語化したもの。十二の大願のなかでも第七願「徐病安楽」は有名です。薬師如来は、人々の病気を治癒して延命させるのみならず、精神的な苦痛までも取り除くとおっしゃいました。
阿弥陀如来とは異なり現世利益に重きをおいたこと、信仰にあまり難しい宗教行為を必要としなかったことから、薬師如来は古代で最も信仰された仏様ともいわれます。
甲山寺の御朱印
弘法大師の人生と深いかかわりのある甲山寺。御朱印は境内にある納経所でいただくことができます。まずはご本尊に参拝するのを忘れないようにしましょう。
こちらが甲山寺の御朱印です。揮毫は薬師如来の種字である「バイ」に「薬師如来」。中央の宝印には、蓮台上の宝珠に、こちらも薬師如来の種字である「バイ」が描かれています。独特な筆跡の揮毫が印象的ですね。
甲山寺の見どころ
山門
コンパクトな境内をもつ甲山寺。荘厳な山門が我々を迎え入れてくれます。
山門を入った右側には、白い塀に沿って木々が植えられていました。
中門
甲山寺には中門もあります。
本堂
中門をくぐった正面にあるのが本堂です。甲山の木々を背景とした、風情あるたたずまいです。
中には、満濃池工事の際に祈願された薬師如来が安置されています。伝弘法大師による作品であるといわれ、檜の一本造りで、重厚で力強い姿が印象的です。
本堂の左側には、御賓頭盧(おびんずる)さまもいらっしゃいました。
願掛け不動尊
本堂から大師堂へ向かう石段の右側に、参拝者の願いを叶えるといわれる不動尊があります。ぜひともご祈願しておきましょう。
子安地蔵尊
大師堂へ向かう石段を上がり切り、右側に祀られています。
昔々、子どもに恵まれなかった女性がひとり。こちらの地蔵にお参りして、前掛けを持って帰ったところ、めでたく子宝に恵まれたそうです。
それ以来、子どもを授かるありがたい地蔵として有名となり、前掛けを持って帰っては、そのお礼に新しい前掛けをと、参拝者があとを絶たないようです。
なお子安地蔵尊の脇には「ありがたや めぐみもふかきちをわけて いえのよつぎを まもるにほとけ」との歌があります。
大師堂
本堂左手の石段を上った先に大師堂があります。中には黒衣をまとった大師像が祀られており、霊場と呼ぶにふさわしい、清浄な空気に満ちています。
毘沙門天尊
大師堂の隣にある岩窟には、大師が彫り上げた毘沙門天が安置されています。岩窟の奥行は12mほど。こちらの岩窟から現れた翁の暗示を受けて、弘法大師は甲山寺の基礎を作り上げました。
まとめ
四国74番札所、甲山寺についてご紹介しました。
コンパクトな境内ながら、荘厳な雰囲気を十分に感じられる四国霊場です。子安地蔵尊などの見どころもたくさん。弘法大師の幼少期に思いを馳せながら、ぜひとも参拝を楽しんでいただければ幸いです。
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