第72番札所曼荼羅寺(まんだらじ)は、香川県善通寺市に境内を構える四国霊場です。
曼荼羅寺の特徴と言えば、なんといってもその歴史。その創建は古く、八十八か所の中で最古といわれます。八十八か所一の歴史を持つ四国霊場の歴史や御朱印、見どころなどをご紹介していきます。
曼荼羅寺の歴史
曼荼羅寺は四国霊場の中で最も古い歴史を誇ります。その創建は飛鳥時代にあたる推古4(596)年といわれ、弘法大師の先祖である佐伯家の氏寺として建てられたのがはじまりです。当時は世坂寺(よさかてら)の名称で知られていました。
大師が同寺を訪れたのが大同2(807)年のこと。唐から帰国した大師は亡き母の菩薩を弔うため、大師がかつて修行した青龍寺を模して、伽藍を建設。大日如来を彫り上げて本尊としました。同時に、唐から持ち帰った金剛界と胎蔵界(たいぞうかい)の曼荼羅を安置し、寺名も「曼荼羅寺」へと改称しました。
寺名である「曼荼羅」は、真言密教の根本を指す言葉です。大日如来を中心として輪を描く仏の世界を、体系的に図示しています。
なお、平成19(2007)に発行された四国八十八か所の文化遺産をまとめた記念切手には、曼荼羅寺の聖観音立像が取り上げられています。
曼荼羅寺のご利益
曼荼羅寺のご本尊は大日如来です。「大日経」や「金剛頂経」で説かれる仏で、「摩訶毘盧遮那(マカビルシャナ)仏」「毘盧遮那(ビルシャナ)仏」「遍照如来」など、実に多様な呼び名があります。
「大日経」「略述金剛頂瑜伽分別聖位修證法門」などの経典の中で、大日如来は「法界身」と述べられています。
「法界」が大宇宙を指すことから、大日如来とは大宇宙そのものであるといわれます。そのため真言宗においては数ある仏の中でも最高の仏とされ、森羅万象がおさまっているともいわれます。
最高仏と謳われる大日如来。そのご利益は現世安隠、所願成就であり、未・申年生まれの守り本尊でもあります。また、本来、如来は出家後の姿をモデルとしているため、装飾品は身に着けていません。しかし大日如来については例外で、豪華な装飾品や宝冠を身に着けています。それらの差別化も、仏像のなかで大日如来が最高とされる所以です。なお、螺髪ではなく髪を結いあげた姿も象徴的です。
曼荼羅寺の御朱印
四国霊場一の歴史を誇る72番札所、曼荼羅寺。御朱印は境内にある納経所でいただくことができます。まずはご本尊に挨拶するのを忘れないようにしましょう。
こちらが曼荼羅寺の御朱印です。揮毫は金剛界大日如来の種字である「バン」に「大日如来」の文字が描かれています。中央の宝印は、宝珠に種字である「バン」です。
力強く、そしてどこか風情を感じさせる御朱印です。さぞご利益があることでしょう。
曼荼羅寺の見どころ
緑信園
曼荼羅寺駐車場の横にあるお接待所です。冬は温かい煎茶、夏は冷たい緑茶を無料でいただくことができます。名産地である三豊市高瀬町の茶葉を用いた、自家製の緑茶は格別です。旅の疲れも癒えることでしょう。
ベンチもあり、お遍路さんにはありがたいお接待所です。お土産などもありますので、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
仁王門
仁王門が我々を出迎えてくれました。境内図には「山門」とあります。
裏側には、大きな草鞋が奉納されています。
西行の昼寝石
仁王門を入って本堂に向かう途中にあります。
曼荼羅寺の近くには「水茎の丘」という丘があります。そこに庵を建て、7年余り暮らしていたのが西行法師です。法師は曼荼羅寺にも足繁く通っていたそうで、本堂前の平らな石の上でよく昼寝をしていたそうです。その当時の石こそ、こちらの「西行の昼寝石」であるというわけですね。
西行法師が都へと戻る際、同行の旅人が桜の木に笠をかけ置いたのを見て「笠はありその身はいかになりぬらん あはれはかなきあめが下かな」と詠みました。この歌碑は昼寝石の横に立っていますので、ぜひご覧になってください。
本堂
370枚で構成された格天井(ごうてんじょう)は内陣と外陣に分かれており、まるで宇宙の仕組みを解き明かしているかのようです。
内陣は天空を意味する「二十八宿」の星座を描き、星座中央には「法輪」、四隅には守り役である「羯磨(かつま)」が配されています。外陣は緑色を基調としており、仏の世界の荘厳花である「暈繝(うんげん)の花」が描かれています。
大師堂
石段を渡って左側に見えるのが大師堂です。周辺には桜の木が生い茂っており、春にはそれはそれは綺麗な眺めを楽しむことができるのだとか。
観音堂
本堂から右手に位置する観音堂には、聖観音立像が安置されています。平安後期の作品で、全長は158cm。檜の一本造りの端麗なたたずまいです。
県の重要文化財であるだけでなく、四国八十八か所記念切手には、こちらの仏様のお顔が描かれています。
笠松大師像
笠松と呼ばれていた後述の「不老松」に彫られた弘法大師座像です。こちらの像をさすって、お遍路さんたちはかつての弘法大師の姿を想うのです。
不老松
弘法大師像にも用いられた「笠松」です。樹齢1200年を超す松の木であり、県の自然記念物としても知られていましたが、松食い虫に侵食されてしまい、平成14年に伐採されました。
寺院の改称の記念に弘法大師自らがお手植えをしたと伝えられ、古くから神仏が降臨する「依り代」であるとも考えられていたそうです。
まとめ
第72番札所である曼荼羅寺について、歴史や御朱印、見どころをご紹介させていただきました。
さすがは最古の歴史を誇るだけあって、見どころもたくさんあります。訪れた際にはぜひ、お接待所で一息しつつ、境内を楽しんでいただければ幸いです。
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