
四国75番札所善通寺(ぜんつうじ)のある香川県善通寺市は、弘法大師生誕の地として有名です。
弘法大師は幼名を「真魚(まお)」といい、ご両親の寵愛を受けて、すくすくとお育ちになりました。記録によると、真魚様はそれはそれは聡明で、信仰心の篤いお子様だったそうです。
大師の生誕地に境内をかまえる善通寺ですが、広大な境内を持つことから、東院と西院に分けてご紹介します。今回は西院について、歴史や御朱印、ご利益の解説などを踏まえたうえで、見どころをご紹介していきます。
善通寺の歴史

江戸時代中期に成立した書物「多度郡屏風浦善通寺之記」によると、善通寺の創建は、唐から帰朝された弘法大師が、父上の寄進した四町四方の地に寺院を立てたのが始まりとされます。師の恵果和尚が住んでいた長安・青龍寺をモデルとして建設され、父上の諱(いみな、死んだ人の生前の名前)である「善通(よしみち)」から「善通寺」と名付けられました。
鎌倉時代には大師の家柄である佐伯家の邸宅跡に「誕生院」が建立。もともと江戸時代まで、善通寺と誕生院は、それぞれに住職を置く別々の寺院でした。しかし明治時代にあたり、善通寺として一つのお寺へと統合されます。
現在では、75番札所としてだけではなく、真言宗善通寺派の総本山、さらに和歌山高野山、京都東寺とならぶ弘法大師三大霊跡の1つとしても数えられています。
境内の総面積は約45,000平方メートル。東院は創建以来の寺域であり「伽藍」として金堂、五重塔などが建てられている一方、今回ご紹介する西院は、もともとは弘法大師が誕生した佐伯家の邸宅跡でした。御影堂を主とする「誕生院」として親しまれ、今なお弘法大師のご誕生所として、その由縁を現代にも語り継いでいます。
善通寺のご利益
善通寺のご本尊は薬師如来です。四国霊場の中でもおなじみの仏様で、西方極楽浄土のご教主である阿弥陀如来に対して、東方浄瑠璃界のご教主とされます。
「仏説薬師如来本願経(ぶっせつやくしにょらいほんがんきょう)」などの経典によると、薬師如来は如来となる前の菩薩であった時代、「12の大願」と呼ばれる誓いを立てました。これは如来が仏様として成し遂げたいことを言語化したものであり、国家の圧政から民衆を救う、飢餓にある人々に美食をもたらす、貧しい人に衣食を与えるなどの誓いを掲げられています。
なかでも有名なのが第七願「除病安楽」です。これは全ての人の病を除き、窮乏から救うことを誓ったもので、薬師如来の代名詞としてよく取り上げられます。薬師如来は現世利益をもたらす仏様であったことから、多くの人々に信仰されるようになりました。
見た目の特徴としては、意外にも、仏様のなかで持物があるのは薬師如来だけ。左手に薬壺(やっこ)を持っているのが特徴です。
善通寺の御朱印

弘法大師の生誕地、そして真言宗善通寺派の総本山としても名高い四国霊場、善通寺。御朱印は境内にある納経所でいただくことができます。まずはご本尊に参拝するのを忘れないようにしましょう。
こちらが善通寺の御朱印です。揮毫は薬師如来の種字「バイ」に「薬師如来」です。中央の宝印には、弘法大師の御手印が描かれています。
善通寺の見どころ

善通寺の境内は広大で、東院と西院に分かれています。駐車場は西院の西側にあり、通常は済世橋を渡り正覚門から西院に入り、一旦東院の金堂(本堂)へ行ってから、改めて西院へ戻り、御影堂をお参りします。
今回は、東院との連絡門でもある仁王門付近からご紹介します。
仁王門

西院から見た仁王門です。

扁額の位置にある見事な彫り物にもご注目ください。
御影堂への回廊

仁王門をくぐった先には、御影堂へと続く回廊があります。
回廊の上部側面には絵画が掲げられており、弘法大師のご生誕のシーン、満濃池改築にあたるシーン、そしてご入定(お亡くなりになること)のシーンなど、約20の作品から、大師の生涯を知ることができます。じっくりと眺めながら、御影堂へと足を進めてみましょう。
御影の池

御影堂の正面には小さな池があります。大師が留学生として唐に渡ろうとした時、別れを惜しむ母君のため、池に自身の姿を写して自画像を描き、母君に贈ったという逸話があります。大師の優しい人となりがよく表れているエピソードです。
かつて池を覆っていた松はすでに枯れてしまいましたが、枯木として保存され、「御影の松」として親しまれています。
御影堂

弘法大師が誕生した佐伯家の邸宅跡に建てられました。天保2(1831)年に建てられ、昭和11年に修築されました。奥殿には、大師の自作といわれるご本尊、瞬目大師像が秘蔵されています。
戒壇廻り
御影堂の地下にある、約100mの通路です。通路は人の姿が見えないほどに真っ暗で、壁伝いに先へ進んでいくことになります。悪行に荷担した者は通路から出られないといわれていますが、大師を慕い、精進することで、やがて大師が明るい灯を灯してくれるのです。
宝物館
善通寺が所蔵する文化財を保存、公開するため、明治40(1907)年に創設されました。約2万点が収蔵されており、うち約30点を「寺宝名品展」として常時展示しています。
なかでも国宝である「金銅錫杖頭」や「一字一仏法華経序品」は一見の価値ありです。ぜひ立ち寄ってみてください。
熊岡菓子店
東院から西院に向かう仁王門前にある、カタパンのお店です。その創業100年を超えた老舗で、地元市民にも親しまれています。
カタパンとは、堅焼きの煎餅のようなお菓子です。日清戦争の時代に軍用食として開発されました。なお一番人気はショウガ味の石パン。コロンとした形がなんともキュートです。
まとめ

第75番札所・善通寺の西院について、御朱印や歴史、見どころについてご紹介しました。
真言宗の総本山さながらの広大な境内と雰囲気は、きっと、みなさまの心を穏やかにしてくれることでしょう。本記事を参考にして、大師がかつて過ごした「誕生院」善通寺西院を、存分に味わっていただければと思います。
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