今回はアンデルセンの名言を紐解き、「彼の考える“立派な大人”とは何だったのか」をご紹介します。
『みにくいアヒルの子』アンデルセンの名言
「自分を“みにくいアヒル”だと思っていたころは、たくさんの幸せがあることに気づけなかった」
I didn’t also think that there was such a lot of happiness when I thought one was an ugly duck.
これは『みにくいアヒルの子』に、自身の経験を重ねた名言です。
とあるアヒルの子の集団の中でも、他の子たちとは見た目が異なる一羽の子。その子が成長すると、実は白鳥であった…。
アンデルセンは子供時代、みにくいアヒルの子と同様、周りに劣等感を抱き、苦しんでいました。しかし大人になったアンデルセンは、「当時の自分の周りにもたくさんの幸せがあったのだ」と気づかされます。
人はだれしも劣等感に苛まれると、自分に起こるすべてが不幸に思えてくることがあります。「劣等感など抱く必要はない。人と違うことを大事にできる人こそが立派な大人である」と、アンデルセンは教えてくれます。
『裸の王様』アンデルセンの名言
Even when he’s in an unfortunate bottom, man is very vain.
これは、『裸の王様』にまつわる名言です。『裸の王様』の内容を簡単にご紹介します。
ある日、おしゃれに気を使う王様に「馬鹿には見えない服」が献上されます。
当然そんな服なんて存在しません。しかし王様は馬鹿と思われたくない気持ちから、見えるフリをします。それに続くように誰も彼もが見えるフリを始めます。
話は大きくなり、ついにはお披露目のパレードをすることに。その様子を見た子供は、王様が何も着ていないことを大声で口にします。結局、「馬鹿には見えない服」なんてなかったことがわかります。
あなたにとって、見栄を張ったことで物事が好転した経験と失敗した経験とでは、どちらが多いでしょうか? この話は、「見栄を張ってもろくなことはない」という教訓を我々に与えてくれます。
つい見栄を張ってしまうのが人間です。しかしアンデルセンは、「見栄をこらえられる人こそが立派な大人である」ということを教えてくれます。
『人魚姫』にまつわるアンデルセンの名言
「人間はほとんど常に、感情の色めがねを通して世界を見ています。そのレンズの色しだいで、外界は暗黒にも深紅色にも見えるのです」
Man always sees almost all world through colored glasses of feeling, and the outside world depends on the color of the lens, and looks poppy darkly.
この名言は、『人魚姫』を念頭においた名言です。
“人魚姫”と聞くと、多くの日本人はアンデルセンのそれと、ディズニーの『リトルマーメイド』のようにハッピーエンドを迎える内容とを混同しているようです。まずはアンデルセンの『人魚姫』の概要を説明します。
人魚の王の末の姫である人魚姫。彼女は、嵐に遭い難破した船から人間の王子を救い出し、その王子に恋心を抱きます。しかし人魚の世界には、「助けた人間の前に姿を現してはならない」というルールがありました。人魚姫は王子を海岸に運ぶことしかできません。そこにたまたま通りかかった娘が王子を見つけて介抱します。
人魚姫は、自分が王子を救った事実をどうしても伝えたくなります。彼女は海の魔女の家を訪れ、声と引き換えに尻尾を人間の足に変えられる薬を受け取ります。同時に、「王子が他の娘と結婚すれば、姫は、薬の効果で海の泡となり消えてしまう」とも警告されます。
紆余曲折の末、王子とともにお城で暮らせるようになった人魚姫。しかし声を失った彼女は、「王子を救ったのは自分である」と伝えることはできません。
王子は、人魚姫が命の恩人だとは気づきません。事実は捻じ曲がり、彼は偶然浜を通りかかった娘を命の恩人と勘違いしてしまいます。やがて王子とその娘との結婚が決まります。
人魚姫は悲嘆に暮れます。姫の姉たちは、自分たちの髪と引き換えに海の魔女に貰った短剣を人魚姫に差し出します。
「この短剣で王子を刺せば人魚の姿に戻れ、泡にならなくてすむ」
これが魔女からの伝言でした。
しかし人魚姫には愛する王子を殺すことはできません。彼女は自らの死を選び、海に身を投げて泡に姿を変えます。王子は、彼女がいなくなったことに気づくことはありませんでした。
この童話には失恋を繰り返し、生涯を独身で通したアンデルセンの苦い思いが投影されています。ここで、先の名言を思い出してください。
「人間はほとんど常に、感情の色めがねを通して世界を見ています。そのレンズの色しだいで、外界は暗黒にも深紅色にも見えるのです」
つまりこの童話は、先入観を持つことの恐ろしさを教えてくれています。そして、「愛する人のために自身を犠牲にできる人、そしてそれを自身の幸福とできる人こそ立派な大人である」と訴えているのです。
童話の価値を教えてくれるアンデルセンの名言
「すべての人間の一生は、神の手によって書かれた童話にすぎない」
Every man’s life is a fairly-tale written by God’s finger.
最後にご紹介するのは、アンデルセン童話の価値そのものを教えてくれる名言です。
アンデルセン童話の多くは、彼の人生経験を基にしています。アンデルセン自身が学んだり、過去を振り返ったりしたことを、子供でも興味が持てるように表現しています。
彼は、「私が書いたものは、ほとんどが私自身の姿であり、登場人物はすべて私の人生から生まれたものである」とか「私の一生は一編の童話であった」といった言葉を遺しています。
「童話は擬似的に他人の人生を経験できるツールである」ということを彼は知っていました。だからこそ彼は童話という形式にこだわったのです。彼は多くの子供に、「人生で大切なことを童話から学んでほしい」と思っていました。
実際、アンデルセンの童話や名言からは、「立派な大人になるために何が必要か」を学ぶことができます。
まとめ
さて、今回紹介したアンデルセンの4つの名言はいかがでしたでしょうか?
子供のために書かれた童話とはいえ、大人になってはじめてその価値がわかるところもあるはずです。みなさんもあらためて彼の童話を読んでみてください。きっと新しい学びがたくさんあるはずです。
当記事で、興味を持っていただいた方はぜひ、「自分は立派な大人になれているか…」という視点で読み直してみてください。きっと大人のあなたにも参考になることがあるはずです。