
北極星(ポラリス)は、いつも北斗七星のそばで輝き、なぜか必ず北の空の同じ位置で見ることができるという、不思議なお星さまです。
北極星はあまり明るい星ではないものの、必ず北の位置にあるので、昔の人は航海をするときなどには、この北極星を見つけることで、それが北であると認識して旅を続けていたのです。
ではこの北極星には、どんな不思議やパワーがあったり、どのような信仰が世界中にあるのでしょうか?
目次
北極星とは

北極星と聞いて頭に思い浮かぶことってありますか?
深く考えたことはないけれど、北のほうで輝いている星のこと…くらいにしか思っていない人のほうが多いかもしれませんね。
北極星は、天の北極に一番近い星と言われています。
天の北極とは、地球の自転軸を天球上に延長した点のことで、そこにもっとも近くて明るい恒星(自ら光を出す天体)です。
南半球からは北極星を見ることができず、北半球からだけ見ることができる星なのです。
そして常に真北の位置で動かないという特徴があるため、古代より方角を知るための目印として使われてきました。
なぜ北極星が動かないのか…。
それは北極星が地球の自転軸の延長線上にあり、地球の自転によって起こる日周運動(天球上の星が東から西へと移動するように見える現象)の中心に北極星があるために、動かないように見えるのです。
もうひとつ、北極星の不思議な現象は、地球の地軸が26000年周期でゆっくりと方向を変え、そのとき回転軸の延長線上にある星が北極星となるため、北極星は入れ替わるのです。
現在の北極星はこぐま座のα星(星の中でも最も明るい星)の「ポラリス」です。
北極星信仰とはどんなもの?

実はこの北極星には「北極星信仰」と呼ばれるものがあります。
それは宇宙で不動の存在である北極星を神格化し、星に願いを込めて信仰するというものなのです。
日本における北極星信仰は、妙見菩薩として仏教に取り入れられており、星の仏様として親しまれています。
もともと北極星信仰の起源は、中央アジアの遊牧民の星神信仰であると言われており、中国から日本に伝わったとされています。
日本では、飛鳥時代に中国からやってきた渡来人によって伝わり、のちに仏教や道教、陰陽道などとも習合しながら信仰を広めてゆきました。
北極星は不動の星であることから、開運の神であり、また人々を導いてくれる道しるべの役も果たしていると信じられているのです。
各国における北極星にまつわるお話

北極星に関しては、各国にいろいろなお話が伝わっています。
中国と北極星
中国では、北極星は宇宙の気が集まる場所であると考えられています。
そして古代中国では、宇宙の中心にある北極星は、最高神の「北極紫微大帝(ほっきょくしびたいてい)」や「天皇大帝」と呼ばれていました。
そして北極星の周りにある北斗七星と合わせて、大切な存在だったのです。
日本と北極星
日本において北極星は、妙見、北辰などと呼ばれていました。
北極星を神格化した妙見菩薩を拝むことで、いろいろな功徳があるとされています。
また北極星を補佐する形にある北斗七星も信仰の対象となっています。
今も日本には北極星信仰の妙見菩薩を祀っている寺社は多く存在し、大阪府の能勢妙見山、大分県の宇佐八幡宮などが有名です。
エジプトと北極星
エジプトにおいても北極星は、大切な役割を担っていたことがあります。
それはエジプトにピラミッドが建設された時代のことです。
エジプトという場所が、天の極の位置にあるため、その時代に北極星であった「りゅう座アルファ星トゥバン」に向かってピラミッドを建設していたのです。
エジプトの人々も、北極星は神様の住む場所であると考えており、不動の北極星は永遠に不滅であるという考えから、ピラミッド建設にその方角を用いたのです。
日本で北極星に関係のある寺

北極星と関係の深い寺社は日本に数多く存在しています。
そんな中でも有名なのが、大阪府豊能郡能勢町の標高660メートルの妙見山(みょうけんさん)の頂上にあるお寺、「日蓮宗能勢妙見山」です。
正式名は、無漏山眞如寺境外仏堂能勢妙見山(むろうざんしんにょうじけいがいぶつどうのせみょうけんざん)という名前で、北極星の神様とされる妙見菩薩をご本尊とし、北極星信仰の聖地と呼ばれています。
ここは今から約1300年ほど前には、為楽山(いらくさん)と呼ばれていましたが、そのころに星の王様がこの山に降り立ったという言い伝えが残っています。
そして749年から757年の天平勝宝年間に、村人たちの願いによって、妙見山の山頂に行基が為楽山大空寺(いらくさんたいくうじ)を建て、北極星をお祀りしたのが、北極星信仰の始まりです。
鎌倉時代の地頭領主の一族である旗本能勢氏による援助により、江戸時代初期に寺の建物が整備されて、妙見信仰の中心となり、現在は日蓮宗のお寺となっています。
妙見山の山頂付近には「星嶺(せいれい)」と呼ばれている信徒会館がありますが、星の形と能勢家の家紋である矢筈(やはず)をデザインした礼拝堂のような建物で、上空から見ると屋根が北極星の形になっており、まさに北極星信仰のシンボル的な存在です。
北極星のご利益

北極星は古くより、人々にとってスピリチュアルな存在でした。
同じ場所で輝き続けることから、人生の道しるべであり、また永続性の象徴であるとされてきました。
北極星を信仰している妙見山では、いろいろなご利益を授かることができます。
開運招福
北極星はあらゆる星の中心であり、不動であることから運命を切り開く力があると考えられています。
また北極星を神格化した妙見菩薩は、運命を司り、運気をアップして開運招福のご利益を得られます。
勝負運
北極星を神格化した妙見菩薩は、その昔武将たちにとっては戦争を司る軍神として信仰され、勝利に導いてくれる力があると信じられています。
厄除け・病気平癒
北極星はすべての方位を守護し、災いを防ぐ力があります。そのため災難除けの力や、病を防ぐ力も持ち合わせていると考えられています。
縁結び
北極星は北斗七星と寄り添っていることから、北極星を神格化した妙見菩薩には縁結びの力があるとされています。
芸能上達
北極星を神格化した妙見菩薩の『妙見』は「妙なる見(すがた)」という意味であることから、芸能の神としての信仰もあり、芸能人や歌舞伎役者などが多く参拝しています。
そのほかのご利益
上記以外にも、北極星や妙見菩薩には、五穀豊穣、商売繁盛、子宝運、交通安全、学業成就などのご利益もあります。
まとめ
北の空に美しく輝く北極星は、昔から人々にとっては不思議でありパワフルな存在として信仰の対象となっていました。北極星を神格化した妙見菩薩を祀る寺社も多く存在し、世界においても北極星の不思議な力を利用して、文化の発展や建築に用いたりしていたのです。



