
日本には「日本神話」に登場する有名な神々のほかにも、それぞれの地方や特定の地域で受け継がれてきた、独特の信仰や神々が存在しています。
一般によく知られているのは、特定の地域を守護している「地主神」や、「山の神」を根幹とする山岳信仰などがあります。
では各地方で信仰されている、ユニークかつ不思議な信仰や神々にはどのような神様がいるのでしょうか?
東北地方の神、アラハバキ

主に東北地方で信仰されている謎多き神のひとつが、「アラハバキ」と呼ばれている神様です。
アラハバキは、民話や神話、伝説などには登場しておらず、謎の神とされているのです。
漢字で書くと「荒覇吐」「荒吐」「荒脛巾」「阿良波々岐」など、諸説あります。
このアラハバキは、縄文時代から信仰されていた太古の神であり、もともとは神社の主神でした。
それにもかかわらず、いつしか『客人神(まろうどかみ)』と呼ばれる、ほかの地方からやってきて祀られる存在になってしまい、その理由も謎のままなのです。
アラハバキは、地方によっては『塞の神(さいのかみ)』とも言われ、渡来の敵や疫病から人々を守ったりする神であると考えられていました。
このほかにも、アラハバキは豊穣の神、足の神、旅人の神であるとも言われています。
一方、アラハバキは『土偶(安産や子孫繁栄、豊穣などを祈るときの祭祀道具として用いられた女性を象った素焼きの人形)』とは同一ではないものの、このふたつには深い関係性があるとされています。
それはおそらく土偶がアラハバキと同じく、豊穣祈願などの祭事に用いられていたことから、アラハバキといえば土偶が出てくるようになったのでしょう。
岩手県にある丹内山神社(たんないさんじんじゃ)は、ご神体がアラハバキ大神の巨石(胎内石)とされ、祀られています。
その石を壁面に触れないようにくぐると、願いが叶う不思議な石とされていることで有名です。
和歌山の神、淡島神

淡島神(あわしまのかみ)は、イザナミノミコトとイザナギノミコトの子供とされていますが、ふたりの最初の子(蛭子神)と同様に、不具の子であったため、葦の葉に乗せて流されてしまったのです。
したがって残念ながら淡島神は、イザナミノミコトとイザナギノミコトの正式な子供としては認められていません。
淡島神を祀る神社は多数ありますが、その総本山は和歌山県の「淡嶋神社」です。
この淡島神は、少彦名神(すくなひこなのみこと)であったという説や、住吉明神の后神であったという説がありますが、淡嶋神社ではご祭神として淡島神が祀られています。
淡島神は女性の守り神とされており、そのご利益は婦人病治癒、安産、子授け、裁縫上達、縁結びなどです。
また淡嶋神社は人形供養の神社として有名で、日本全国から送られてきたあらゆる人形が、供養のためにこの神社に納められています。
そしてこれらの納められた人形が、夜になると動いたり、人形の声が聞こえるなどの心霊現象が起こるということでも有名になっています。
しかし面白半分にそういう心霊現象を体験しようとはせず、霊に対して敬意を払うことを忘れてはいけません。
沖縄の神、ヒヌカン

「ヒヌカン」は、沖縄の火の神様のことで、「火の神」と書いて「ヒヌカン」と読みます。
ヒヌカンは、沖縄では古くから、かまどを守る神、あるいは家や家族を守る神様として祀られてきました。
沖縄の多くの家庭では、台所にこのヒヌカンを祀り、主に女性が拝みます。
そして代々女性に引き継がれ、女性が独立するときにはヒヌカンのウコール(香炉)の灰を譲り受けて引き継いでゆくのです。
ヒヌカンは、もともとはかまどの後ろに並べられた3個の石を依りどころとしていました。
しかし現在では、ウコールの灰を依りどころとしており、その灰は家族の記録が残る場所でもあり、ふだんは年に1度だけ、その灰の掃除をします。
その家の主婦は家庭の重要事項、結婚、出産などもヒヌカンに報告するとともに、お願いごともします。
そしてヒヌカンは、いったいどのようなお姿をされているのか…これには諸説あるようで、太陽であるという説、女性であるという説、夫婦であるという説、兄弟神であるという説などがあります。
沖縄・奄美大島の不思議な世界、ニライカナイ

「ニライカナイ」とは、実は神様ではないのですが、沖縄や奄美地方に伝わる不思議な場所、理想郷の呼び名なのです。
ニライカナイは海の彼方という意味で、先祖が神に生まれ変わる場所であるとされています。
南西諸島の人々の間では、このニライカナイから神様がやってきて、みんなに豊穣をもたらしてくれるという伝説が残されているのです。
またニライカナイは、楽園のような場所でもありながら、亡くなった人が行く場所でもあると考えられ、また生命が誕生する場所でもあり、多くの先祖神が暮らしているところとされています。
つまり亡くなった人がその場所に行くと神に生まれ変わり、先祖神になるということなのです。
そして必要なときに自分の子孫を助けるために、それぞれの島に出向くと言われています。
南西諸島では、このニライカナイに住む神様を拝むために、遠くの海を見渡せる崖の上などに拝所が設けられています。
そしてこのニライカナイからやってきた女神と男神が、沖縄の島々を創ったとされているのです。
アイヌの信仰、カムイ

「カムイ」はアイヌ語で神や、神格を持つ霊的な存在を表す言葉です。
カムイは漢字で書くならば「神居」あるいは「神威」となりますが、もともとはアイヌ語の「kamuy」です。
また人間がかかわるすべての自然、山、川、水、火、動植物に宿る霊的なものや魂のこと、人間が敬意を払うべき存在をカムイと解釈するのです。
したがってカムイは神を表す言葉とはいえ、どちらかというと霊や魂を表す言葉といえるでしょう。
そして人間の役に立つカムイもあれば、そうでないカムイもあり、自然に宿るそれぞれの霊や魂は、それぞれの目的を持ってこの世に生まれ出てきたと考えられています。
人々は、人間にとって豊かさをもたらしてくれるカムイには感謝し、祈りを捧げます。
しかし中には災いや不幸をもたらすカムイも存在し、そのカムイには罰を与えることもあります。
通常よいカムイは神の世界に住んでいますが、人間の世界にやってくるときは、自然や道具などに姿を変えて現れてくるのです。
あなたが今使っている道具、かわいがっている植物やペットの中にもカムイが存在し、あなたを守っているに違いありません。
まとめ
日本には、よく知られた八百万の神々以外にも、それぞれの地方に不思議な信仰や神様や伝説が多く存在しています。人々が太古より信仰してきた神々や魂、霊などは、心の依りどころであり、幸せをもたらす存在として、欠かすことができないものだったのです。



