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”私は死んでいる”と思い込むコタール症候群5つの不思議

コタール症候群

1880年に発見された「自分は死んでいて、この世には存在しない」という奇妙な病気、コタール症候群。耳慣れない名前ですが、この病気はうつ病の最も重篤な症状であり、死の恐怖と結びついていると考えられています。コタール症候群とは、どんな症状を伴う病気なのでしょうか?

強い虚無感から生まれるコタール症候群

コタール症候群は、自分には生きる価値がないという思い込みから、死んでもなお未来永劫生きていかなければならないと妄想してしまう精神疾患です。

コタール症候群が引き起こす5つの精神状態とその治療法を見ていきましょう。

体の一部が存在しない・機能していない

コタール症候群の典型的な症状は、自分の臓器・体の器官などは存在していない、なくなってしまっている、体の一部が腐敗しているという妄想を抱くことです。

食事をとっても水を飲んでも、それを吸収・消化する器官や臓器がないために食べることができないと考えたり、自分は呪われているから食べる必要はないと思い込み、ひどい栄養失調や脱水症状で病院へ運ばれるケースもあるようです。

まずは体の治療から始まり、一見身体上は回復したように見えても本人の状態がよくならないために精神疾患と気づく、というように発見が遅れてしまうことがあります。しかし、精神療法だけでは回復は難しく、抗うつ薬などを投与し治療する必要があります。

永遠に生き続けなければならないと思い込む

自分には命がないため、どんなに苦しくても死ぬことができないという妄想に襲われてしまい、絶望的な状況から、自傷行為・自殺行為へと発展してしまう場合もあるようです。

憂鬱で苦痛を感じる人生を続けなければならないという恐怖心から生まれる思い込みで、うつ病患者にもみられる症状です。コタール症候群は、自己否定感と強い虚無感を伴っており、自傷・自殺のリスクがある重症例では、電気けいれん療法が実施されることがあります。

コタール症候群の特徴的な症状として、「真っ暗闇の中に火が燃えているのを見た」という「火の体験」を経験する患者もいるようです。

感覚と感情が結びつかない

例えば、指に針が刺さると「痛い」と感じ、血が出て来るものです。通常は、生きているなら当然のことだと認識します。自分は死んでいると感じるコタール症候群の患者は、指に刺さった針を痛いと感じず、死者(である自分)でも血が出ることに大変驚くそうです。

コタール症候群の患者に生きているという証拠を見せても、すべて「死者である」という思い込みに合うように曲解してしまい、理性的に判断することが難しくなっています。

精神疾患を患っている場合、自分が病気だとは気づかないことが多く、コタール症候群では自分の感情と感覚が結びつかない=「死んでいる」と考えてしまうのかもしれません。

欧米圏で多い信教者のコタール症候群

欧米では、敬虔なカトリック信者の原罪的な思想からコタール症候群となってしまうケースが見られるようです。

「自分は神が創造した人間の中でも最も邪悪な存在である」「全知全能の神の前でひれ伏すしかない罪深い人間である自分は、この世に生まれていない」というものです。

どちらも強い卑下・懺悔の念からの思い込みであり、属する文化や社会、取り巻く環境や信仰する宗教によって異なる症状を見せるため、「文化依存症候群」の一種とされることもあります。

日本で見られるコタール症候群の症状

虐待や性的な被害にあった部分を脳が無視することにより起こる症状もあります。

「虐待されて殴打された部位は、その時に消えてしまった」「性器や胸部は私には存在していない」との思いから、自分はすでに死んでいると思い込んでしまう場合もあります。まれに自分の妄想を自覚していることもあり、妄想と理性との間で葛藤が生まれ、その軋轢から自殺を図ることもあるそうです。

コタール症候群は老齢期に見られる症状としての研究が盛んですが、思春期の男女・10代・20代の女性に偏って見られるという特徴もあるようです。完治させるためには、周囲の人々の協力が不可欠であり、根気強く治療を続ける必要があります。

まとめ

コタール症候群の患者が生み出すこれら5つの症状は、自分の存在意義を否定する強い思いから発生するものです。強い責任感を持ち、周囲の助けを借りずに人生を送って来た方の発症例が多いという説もあります。柔軟な思考で、不満や不安などをため込まないように心がけることがコタール症候群を予防する手立ての一つといえるでしょう。

世界でも珍しい症状であるコタール症候群は、まだまだ未解明の部分がある精神疾患です。薬物療法が主な治療法ですが、医学や心理学・人間の心のメカニズムなどの研究も進んできている現代ですから、コタール症候群のより良い治療法が見つかり、改善されていくことを願ってやみません。

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SPIBRE編集部

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