
四国霊場59番札所のある国分寺(こくぶんじ)の周辺地域は、かつて伊予の国府があった場所であり、伊予文化発祥の地でもあります。
開創当時は、現在地よりも150mほど東に存在していたようで、その跡には巨大な礎石が残っています。礎石の配置から推測するに、七重塔の高さは60mほど。さぞ豪壮な七堂伽藍であったことでしょう。
かつての面影そのままに、現在も伊予に栄える国分寺について、歴史や見どころなどをご紹介していきます。
国分寺の歴史
開創は天平13年。かの有名な聖武天皇の勅願を受けて、高僧行基がご本尊である薬師如来像を彫像し、安置しました。
第3代住職である智法律師の代に弘法大師が来訪し、「五大尊明王」の画像一幅を奉納しました。のちには大師の弟子も国分寺を訪れ「法華経」の一部を書写して納められています。
国分寺の歴史は、度重なる災禍の歴史でもあります。10世紀から17世紀半ばにかけて、国分寺はなんと4度の火災に見舞われているのです。
①天慶2年(939) :「藤原純友の乱」により灰に帰す
②元歴元年(1184):源平合戦の戦火に伴い焼失
③貞治3年(1364):南北朝時代、讃岐・細川頼之の兵火によって焼失
④長宗我部元親の「天正の兵火」(16世紀)にかかり、堂塔を焼失
4度目の兵火に遭ってからの国分寺のありさまはあまりにも悲惨だったようで、その様子は「茅葺の小堂が寂しく建つのみ」という「四國禮霊場記」(1689年、寂本著)の記述からも、想像に難くありません。
本格的に寺院が復興したのは江戸時代後期からです。幸い国分寺に存在した文化財の多くは現存し、寺院自体もまた、四国霊場のひとつとして現代まで引き継がれています。
国分寺のご利益

国分寺のご本尊は薬師如来です。正式名称は「薬師瑠璃光如来」といいます。
薬師如来と並び、私たちになじみ深い阿弥陀如来が西方極楽浄土の教主である一方で、薬師如来は当方浄瑠璃界、つまり現世の教主であるとされています。
薬師如来は天台宗のご本尊として扱われることも多いです。来世を救う阿弥陀如来に対して、現世を救う薬師如来はその信仰も薄いという論調がなされることもありますが、そんなことはありません。
現世利益をつかさどる如来は実は案外珍しく、法隆寺や薬師寺など、多くの寺院で薬師如来像が造られています。
薬師如来の特徴といえば、左手に持った薬壺です。言い伝えによると、中には万病を治す法薬が入っているといわれています。しかし、実際の薬壺は中身が空洞であることも多く、時には入れ物ですらない木の塊である場合も。薬師如来自体、平安時代以降は薬壺を持たずに彫像されるケースも多く、阿弥陀如来との区別が難しいことも往々にしてあります。
国分寺の御朱印

災禍の歴史に見舞われながらも、今なお繁栄を続ける国分寺。御朱印は境内の納経所でいただくことができます。まずご本尊にご挨拶するのをお忘れなく。
こちらが国分寺の御朱印です。揮毫は薬師如来の種字「バイ」に「薬師如来」です。中央の訪印には、蓮台上の宝珠に薬師如来の種字である「バイ」が描かれています。淡々としながらも、どこか力強さを感じる御朱印ですね。ぜひ、ご利益をいただきましょう。
国分寺の見どころ
寺門まで

駐車場の出口には看板と、仏教における天部の仏神である毘沙門天の像があります。参道の石段を使って、入り口へとあがっていきます。

石段を上がって右手には鐘楼堂がありましたので、見学してみてください。
石柱門

石柱門を入ってすぐ左手に石仏があります。
とくとく弁天

石柱門を入って左奥には「とくとく弁天」と呼ばれる祠があります。

「とくとく弁天」の右には手水舎もありますので、こちらでお清めをするようにしましょう。
薬師の壺・握手修行大師

参道の右側にはユニークな石像「薬師の壺」と「握手修行大師」があります。大師と握手をするというのもなかなかない機会です。ぜひともご利益をいただいておきましょう。
七福神像

なんとも可愛らしい七福神像もありました。どの神様にも赤い帽子によだれかけが掛けられているので、よく見ないと、どれがどの神様なのか区別しにくいかもしれません。ちらりと見える持ち物を見て判別してみるのも面白いですよ。
本堂

ご本尊である薬師如来が安置されています。なお本堂右には、薬師如来の特徴ともいえる「智恵・福徳の錫杖」が置かれています。

大師堂

本堂の後は大師堂にお参りしましょう。
隣接する神社

石柱門を右に行くと、隣接する神社も訪れることができます。他ではなかなか見ない風景ですので、神社も一緒に訪れてみればいかがでしょうか。
まとめ
伊予文化の発祥地に寺院をかまえ、今なお存在感を放つ四国霊場、国分寺。こじんまりとした境内ながら、その立地、内情は非常にバラエティに富んだものとなっております。ぜひ、足を運んでみてくださいね。
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